「完璧なアルバム」スティーリー・ダンの最高傑作、名盤『彩(エイジャ)』は如何にして生まれたか。


「自分が思う限りの最高のバンド」で「完璧なアルバム」をつくろう。

バンドを組んでオリジナルの曲をつくったりしたことのある方なら、一度はそんな夢想をしたことがあるのではないでしょうか。

今日は本当にそんなことを考えて実行し、実際にとんでもないアルバムが生まれてしまった

という話をしたいと思います。

それがスティーリー・ダンの最高傑作アルバム、

『彩(エイジャ)』(原題:Aja)です。

どんなところがすごいのか、どうしてそんなアルバムが作れたのか

一つ一つ解説していきたいとおもいます。

本稿の前半部では、アルバムの具体的な内容と背景。

後半部ではどうしてこのような名盤が誕生したのかの考察していきます。

I. スティーリー・ダンとは

まずはスティーリー・ダンについて紹介していきます。

60年代後半から70年代初期、ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーという、作曲家がニューヨークで成功を夢見ながら活動を続けておりました。

そんな二人にABCレコードのゲイリー・カッツという人物から「西海岸」にきてバンドを結成しないか、と誘いがきます。

二人はもともと作曲家志望でしたので正直気が進まなかったんですけど、このチャンスに飛びついて、バンドメンバーを集め、スティーリー・ダンを結成。

1972年、アルバム『キャント・バイ・ア・スリル』(原題:Can’t Buy a Thrill)でデビューします。

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このアルバムからは「ドゥ・イット・アゲイン」「リーリン・イン・ジ・イヤーズ」がヒットします。

ちなみにスティーリー・ダンという名前はウィリアム・バロウズ『裸のランチ』からですが、まぁ詳細は割愛します。調べれはそのわけはわかります…。

キャリアは順調につんでいくものの、もともと作曲家志望だったため、ライブに消極的なドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーと他のメンバーとの溝は深まりました。

その結果、次々とメンバーはやめていったり、二人がメンバーを首にしたりで、『彩(エイジャ)』が出るころにはオリジナルメンバーはドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーの二人と、ギタリストのデニー・ダイアスだけになっていました。

そのデニーの出番も『彩(エイジャ)』にはほとんどありません。

欠けていったメンバーの穴埋めには優秀なセッションミュージシャンを起用していき、この二人のコンビは理想的な音楽を追い求めるようになっていったのです。

ここまでが背景です。

II.『彩(エイジャ)』はどんなアルバム?

『彩(エイジャ)』はそんなスティーリー・ダンの6枚目のアルバムです。

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前7曲と曲数は少なめですが、少し長尺で、聴き応えのある作品がいっぱい詰まっています。

曲は全てフェイゲンとベッカーの共作。

ジャケットに写っているのは日本人モデルの山口小夜子、写真を取ったのは藤井秀樹

エイジャというタイトルはドナルド・フェイゲンの高校時代の友人の兄が結婚した韓国人女性からとられたました。

ジャケットの日本人モデルといい、エキゾチックな雰囲気をだしたかったのかもしれません。

アメリカではチャート最高位3位。イギリスでは5位でした。

結果的には彼らのキャリアの中で最高のセールスを記録します。

ジャンル的にはジャズロック、A.O.R(アルバム・オリエンテッド・ロック、またはアダルト・オリエンテッド・ロックの略)の名盤として語られることが多いです。

プロデューサーはドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーの才能を見出したゲイリー・カッツ。

このアルバムの画期的だったところはなんといってもその完成度の高さにあります。

前述したようにかけたメンバーの穴を優秀なセッション・ミュージシャンで埋めていったスティーリー・ダンは、今作でその手法をとことん突き詰め、まさに自分たちの理想の音楽を作り上げることに成功しました。

まず、曲を用意します。この時点で彼らの頭のなかにはすでに曲の理想的なビジョンがありました。

次にそれを再現するのに最適と考えられるようなスタジオ・ミュージシャンの組み合わせを考え、実際に演奏させます。

それでしっくりこなかったらまた次の組み合わせを考えて、新たにバンドを組みなおします。

そうして一曲一曲彼らの思い描いた作品に仕上げていったのです。

主な参加ミュージシャンは、

ラリー・カールトン (ギター、エレクトリックギター、代表作『夜の彷徨』)
スティーヴ・ガッド (ドラム、代表作ポール・サイモン「恋人と別れる50の方法」)
ジェイ・グレイドン (ギター、エレクトリックギター、後にエアプレイを結成)
ジム・ケルトナー (パーカッション、ドラム、名セッションドラマー)
マイケル・マクドナルド (ボーカル、バックグラウンドボーカル、ドゥービー・ブラザーズのボーカル)
バーナード・”プリティ”・パーディ (ドラム、アレサ・フランクリンやジェームス・ブラウンなど、後にHip Hopでサンプリングされる多数のフレーズを叩く)
チャック・レイニー (ベース、名セッションベーシスト)
リー・リトナー (ギター、代表作『キャプテン・フィンガーズ』)
ウェイン・ショーター (フルート、テナーサクソフォーン、ウェザー・リポートのメンバー)

と超豪華です。

III. 曲紹介

1. ブラック・カウ “Black Cow”

アルバムのオープニング曲。


名盤とか「完璧なアルバム」とか、「名プレイヤー揃い踏み」とかそういう触れ込みで、こっちは聴こうとしてるわけですよ。

どんなエキサイティングな曲が始まるのかなとワクワクするわけです。

そしたらその期待をサッとかわすように、ピローンとかいってエレピの音でゆったりしたビートで始まるんですね。

最初はなんか凄くがっかりしたんですが、これがなかなかのスルメ曲なんですよ。

気づいたら大好きになって名曲だっ、ってなってました。

ブラック・カウとはルートビアにアイスを乗っけた飲み物。

元カノに偶然あって誰かと元気そうにはしゃいでるという様子をコミカルに描写していく曲。

こういうストーリーの歌詞はよくあるんですが、それがとんでもなく高度な技術の上に成り立ってるのは珍しい。

馬鹿話をまじめにやるというか。後ほど詳しく述べますがここミソですよね。

2. エイジャ “Aja”


タイトルトラック。1番長い曲。

スティーリー・ダン流のラブソング。

聴き所はスティーヴ・ガッドのドラムとウェイン・ショーターのテナーサックスのソロの絡みですかね。

このソロでスティーヴ・ガッドはミスってしまい、ドラムスティックがあたって鳴ってしまった音が入ってしまっているんですよね。

でもここではそのミスはそのまま採用されています。

でもそのミスで曲が損なわれているわけでもなくて、むしろそのミスが話題になって逆に聴き所になっているんですよね。

3. ディーコン・ブルース “Deacon Blues”


一念発起してミュージシャンになりたい破滅型の男の話。

1番では決意を固め恋人と別れてミュージシャンになるぞという宣言から始まります。

2番は夜の町を主戦場に暮らしていき、最後にはぼろぼろになりながらも満足した曲をかけたというところで終わります。

少なからず自伝的要素はある曲かもしれません。

4. ペグ “Peg”


おそらく本作で一番とっつき易い曲。

ラリー・カールトンの代表的インスト曲「ルーム335」の元ネタ。

ペグはギターの弦を調節する部品ではなく人の名前。

ハリウッドに有名なハリウッドサインというものがあります。山にくっついてるHOLLYWOOD のあれですね。

この曲はそのHの文字の所から身投げしてしまったハリウッド女優の歌と言われています。

といっても暗い曲ではなく、陽気なリズムの楽しい曲です。いわばデュランデュランの「リオ」の先駆けですかね。

後にドゥービーブラザーズのメインボーカルをつとめていたマイケル・マクドナルドの分厚いゴージャスなコーラスがサビ部分を彩っています。

クラシックアルバムというドキュメンタリーシリーズでこの曲にまつわるエピソードが披露されていて、それが面白い。

ベースのチャック・レイニーは当時ディスコサウンドで流行っていたスラップベース(パーカッションみたいにベース弦を楽しい叩いたり、弾いたりしてアタックの強い音を出す奏法)をありきたりだからやるなって言われてたんですけど、なかなかOKテイクがでない。

そこでサビの部分で後ろを向いてこっそりスラップベースを弾いたら気づかれずに採用されたみたいです。

言われた事をただやってるだけでもダメなんですね。

5. ホーム・アット・ラスト “Home At Last”

Home At Last

バーナード・パーディーのシャッフルで刻むハイ・ハットが超気持ちいい一曲。

ギターソロはウォルターベッカー。

これがまた極上なんですよ。

6. アイ・ガット・ザ・ニュース “I Got The News”

I Got The News

エドグリーンの軽快なドラミングが気持ちいい一曲。

マイケル・マクドナルドのコーラスが入ってくる後半がいいですね。

映画音楽っぽいホーンとかビブラフォンがクール。

ギターソロはまたもやウォルター・ベッカー。

7. ジョージー Josie

Josie

ドラムはジム・ケルトナー。フィルインかっこいいです。

チャック・レイニーがベースで、ティモシー・B・シュミットがコーラス入れてます。

またベッカーのギターソロ。ベーシストとしてよりギターでめだってます笑。

前二曲に比べたらオーソドックスなギターソロ。

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