異論は沢山あるとは思いますが、所謂「ロック」という音楽ジャンルがメインストリームで最後の輝きを放っていた時代が90年だと個人的にはおもっています。そして、そのその有終の美?を飾るようなアルバムが今回語っていきたいレディオヘッドの名盤『OKコンピューター』(Radiohead / OK Computer)なんじゃないかなと。
2000年以降もロックというジャンルはそれなり「いいアルバム」を幾つか出してるとは思うんですけど、革新的な音って言うのは、これ以降はヒップホップや電子音楽に道を譲った感はあるんじゃないでしょうか。というかもうジャンル分けなんてどうでもいいといいうか、ジャンル横断的なサウンドじゃないと戦えないっていう時代に突入しているとおもうんですけどね(執筆時2021年)。
話を『OKコンピューター』に戻すと、本作はレディオヘッドのキャリアにおいてジャンル横断の先駆けといえるようなサウンドを鳴らしているアルバムなんですね。前作が純然たるギターロックだったのに比べると様々なジャンルの要素が入ってきています。まぁ今聴くと全然ロックなんですけど笑。
またこれだけダークな内容だったにも関わらず商業的にも成功を収めたという意味でも規格外のアルバムかなと。売れた理由も考察してみたいと思います。
なぜ、『OKコンピューター』は名盤認定されているのか。
勿論曲がいい、演奏がいいというのは大前提として、名盤名盤と言われて久しい本作ですが、どこがそんなに凄いんですかね。
一般的に本作が高い評価を受けているのはそのサウンドの先進性です。
彼らは前作『ベンズ』でギターロックのフォーマットとしてはほぼ完成形みたいなところまで来ちゃったんです。ギターを中心とした「ロック」という音楽のフォーマットの行き詰まりみたいなものを彼らは感じていたと思うんですよ。という事で『OKコンピューター』ではこれまで彼らがやっていたギターロックの以外の要素をとり入れて今までになかった音楽を提示してきたんです。ヒップホップとか電子音楽とかね。
そういう外部の要素を取り入れるというのは今までたびたびロックというジャンルが行き詰るとやってきた事なんですけど。
まあそれでもまだ限界を感じていたのか、彼ら自身がただ単に先に進みたかったのか、この後レディオヘッドは4枚目の『Kid A』でさらに電子音楽へ接近していくのですが。とにかくこのアルバム以降、彼らを形容するとき、「果たしてロックバンドっていいきってしまっていいのかな、レディオヘッドはレディオヘッドなんじゃない?」って感じになっていきます。
一方当時の「ロック」シーンはというと、何かを取り入れるというよりは本来の姿に接近するようになります。それが2000年代初頭の「ロックンロール・リヴァイヴァル」です。一般的にロックが先祖返りをする中レディオヘッドは『Kid A』以降もどんどん音楽形態を変え続けていきます。そしてその姿は様々なバンドやアーティストに影響を及ぼしてきました。
ということで彼らが大胆に音楽性を変化させるきっかけ、始まりの一枚ということで『OKコンピューター』は歴史的重要作とみなされるようになったのです。
とまあこれが一般的な評価が高い理由なんですけど、僕が考えるこのアルバムの高評価の理由がもう一つあって、それは歌詞です。
日本のリスナーには歌詞はあんまり気にしないかたが意外と多いので共感していただけるわかんないですけど、やっぱり歌詞が優れている、共感できるってところがこのアルバムが大いに支持を集めている理由の一つなんじゃないかと思います。
前作でも深く個人に語りかけてくる様な歌詞は健在だったんですけど、本作ではよりテーマが広く、そして深くなっているんですね。
具体的には現代生活の中で疲弊していく個人、がテーマなんじゃないでしょうか。
日々そのようなストレスにさらされている我々(そうでない人ももちろん沢山いるかもしれないですけど…)としては、歌詞を読み込むごとに曲への特別な愛着がわいてきてしまうとおもうのですがどうでしょう。そしてそんな歌詞の内容が共感を呼び、愛され続けてきたんじゃないかなと思います。
現時点では説得力がないと思いますので、このテーマについては各曲をみていくことでもっと掘り下げたいと思います。
「このアルバムは何度も聴いてるけどそういえば歌詞気にしたことない」という方は是非読んでいただきたいです。
それでは概要を説明し終わったところで中身の紹介に移ります。