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PerfumeがPerfumeになった名盤『GAME』【全曲解説】

今回はPerfumeのファーストアルバム『GAME』を取り上げます。

Perfumeは最早説明が要らない程の国民的なテクノポップユニットですが、その原点となる本作を、今あらためて聴きかえす事で色々と見えてきたんでそれを紹介したいなと。

このアルバム、まずシングル曲が5曲も入ってまして結構贅沢なアルバムなんです。

そしてアルバムだけに入ってる曲も粒揃いなんですね。

それでは早速全曲解説していきたいとおもいます。

1.  ポリリズム

パフューム現象とでも言うべき大ブレイクのきっかけになった曲であり、代表曲でもあります。

NHK・公共広告機構2007年度共同キャンペーン『リサイクルマークがECOマーク。』CMソングになりました。

実は筆者もPerfumeを知ったのはこのCMを見て「いい曲だな」と思ったのがきっかけでした。

この曲はPerfumeの曲の作詞作曲プロデュースを手がける中田ヤスタカさんとの最初のコラボ曲だったんですね。

そして、あらためて今聴くとアルバムの他の曲に比べて探り探りな感じがあってちょっと浮いてる感じがします。

アイドルとしての体温の残し方が他の曲とちがうというか。

歌の加工の仕方がより機械っぽい方向に寄せてるんですね。

3人のそれぞれの個性も打ち出してないですし、ボーカロイドに近い様な感じです。

代表曲だけど今聴いてみると決してPerfumeらしくないというのが面白いです。

ここからは余談なんですけどPerfumeの広島ローカルアイドル時代には元爆風スランプのパッパラー河合さんが楽曲提供、プロデュースをしていたこともあります。

パッパラーさんはポケットビスケッツでプロデューサーとして大成功していたのでその関係もあったんでしょうね。

2. plastic smile

四つ打ちの弾けるようなリズムトラックとオクターブで上下するシンセベースが気持ちいいダンスポップナンバー。

それなりにちゃんとしたスピーカーで、音圧を感じながらでかい音で聴きたいですね。

「ポリリズム」に比べるとより3人の個性が活かされてるのか分かるかと思います。

トラックはアップテンポで快活なのに歌はどこまでも一定のクールさを保っているのが面白いです。

Yeahって言う叫びもささよくように歌われてますしね。

ライブではまた違うテンションなんでしょうね。

盛り上がりそうですし、音源とは違ったPerfumeが楽しめるっていうのもライブでの売りなんでしょうね。

3.   GAME 

アルバムのタイトルトラック。

野太いシンセサウンドで始まってゴリゴリのテクノっぽい曲。

かとおもいきやしかし、歪んだギターの様な音だったり、より生っぽい音に寄せたドラムのフィルインが入ってたりするのが面白いです。

4.  Baby cruising Love

森山未来主演映画『モテキ』でも印象的な使われ方をしたシングル曲。

距離ができてしまったカップルの歌で「後悔」と「航海(Cruising)」をかけています。

「宝」や「行きたい場所」など歌詞に出て来るモチーフも航海に絡められています。

5. チョコレイト・ディスコ

バレンタインが近くなると必ず流れる季節定番曲。

「ポリリズム」より街中で耳にする機会は多いかもしれないですね。

イベントの規模の割にはクリスマスソングより圧倒的にバレンタインソングは少なくて、露出を増やすっていう戦略的な物があったのかはわからないですけど、巧みなマーケティングだとも言えます。

6. マカロニ

シンセベースが奏でるメロディラインが印象的なミドルテンポの落ち着いた一曲。

「Baby cruising Love」との両A面シングル曲。

Perfumeの曲は他のアイドル同様に恋愛関係を歌った曲が大半なのですが、恋愛に対するスタンスや温度感が違いますよね。

だいぶクールですし、冷静な感じがします。

それが結構年配の大人も照れずに聴けて、幅広い年齢層に受け入れられる秘訣なんだとおもいます。

7. セラミックガール

微妙に解釈が難しい曲。

誘ってくれる異性の友達はいるんだけども「アンテナが届かない」、ピンとこないからその恋には踏み出せない。

理想のきちんとした恋をしたい、そんな私はセラミックガールという内容。

そんなふうに解釈しました。

セラミックの特性として耐熱性に優れているとあります。

そんな簡単に熱には浮かされないということでしょうか。

割と早いテンポで言葉が紡ぎ出される歌を、オートチューンで更にデジタルに加工して、気持ち良さをブーストさせたAメロ部分がいいですね。

初音ミクなどのボーカロイド的なデジタルな快楽性とアイドル的な体温を兼ね備えているというPerfume最大のハイブリッドな魅力をわかりやすく提示してくれるナンバーだとおもいます。

そしてそのフォーマットとしてシンセポップ、テクノポップが最も適してたんでしょうね。

8. Take me Take me

EDMっぽさが最も色濃いナンバー。

歌もほとんどなく、本作で1番ハードなテクノチューン。

テクノ風ポップというよりかはもうエレクトロニカという形容がすっきりする曲。

ならば「歌のほとんどないこんな曲をわざわざPerfumeでやる必要があるのか?」、となるんですけど、ありありなんですね、これが。

歌詞はTake me Take me, Take me tonightとそれだけをシンプルにくりかえしただけのもの。

直訳すると、「連れてって、連れて行って今夜」というような意味になります。

たったこれだけなんですけど、メロディーとか歌い方の情感で、かえっていろんなストーリーが浮き上がってきます。

そのストーリー性の浮き上がり方、短いフレーズから読み取れる情報量っていうのはやはりPerfumeだからこそ豊かだという気がしますね。

ビジュアルの見せ方、完成度の高いアーティスティックなライブとPerfumeは単純にアイドルとして割り切ることに抵抗があると思うんですよ。

しかしむしろアーティストとして捉えた方がしっくりくる場面があります。

そんなわけでアイドルとアーティストの両立(奇しくもこれは、YMOが後期にやってのけたことなんですけれども)と言うこのアルバムの後の彼女たちのポジションを示唆するような重要なトラックだとおもいます。

9.  シークレットシークレット

イントロがとても面白いですね。

スマホの目覚ましのパターンの様な非常に抽象的な短いフレーズがふっと現れ、またフェイド・アウトして消えていく。

これを繰り返して曲がスタートさします。

森永乳業「pino」CMソングに起用された事もあり、プロモーションビデオにもモロにピノが出てきます。

RHYMESTERの宇多丸さんがテレビ番組の司会者役でゲスト出演しています。

ビデオの作りはまだまだアイドルっぽさが濃いところもありますがイントロの方のカチッとした感じはその後のPerfumeの見せ方の雛形になっていそうです。

この曲の面白いところはサビが凄く体温を感じるふわっとする歌とサウンドなのに、それ以外の部分はもっとシリアスで体温を感じさせない冷たさがあるところですね。

この対比が面白いです。

見てきたようにCMや映画の挿入歌などかなりのタイアップがこのデビューアルバムの時点で組まれています。

マネキンの様にクールに商品を纏えるある種の無機質さとアイドル的な魅力で商品を身近に感じさせる力。

この二つの矛盾する利点を兼ね備えているPerfumeは広告媒体としてものすごく魅力的なんでしょうね。

商品を身にまとうだけでそれがクールで身近なものなんだという説得力が出てしまうというか。

またテクノっていう常に未来を想起される音楽ジャンルもこの場合プラスに働きます。

先進性や希望ある未来まで薄らと見せてくれますからね。

10. Butterfly

流れるようなシンセのフレーズが正に華麗に舞う蝶を想起させる一曲。

力強いリズムはどことなくジャングル用な雰囲気もあり中南米あたりの大きくて優雅な蝶をなんとなく連想してしまいます。

この蝶の比喩はヤスタカさんが好きなのか、「Magic of Love」という曲にも出てきます。

11. Twinkle Snow Powdery Snow

「チョコレイト・ディスコ」と一緒に「Fan Service[sweet]」というタイトルでシングルとして発表された曲。

四つ打ちのビートと裏箔のハイハットが強調されたダンスチューン。

PVの踊りの振り付けなどをみるとアーティストというよりはまだまだアイドル的な要素の方が強い一曲。

「チョコレイト・ディスコ」同様冬によく外で聴くことの多い楽曲。

12. Puppy love

アルバム最後の曲。

この曲だけアレンジが電子音でなく、アコースティックギターやエレキべース、生ドラムなどのいわゆる「バンド」に近い形の音色。

中田ヤスタカさんの「バンド」プロデュースやアレンジも聴いてみたいと思った一曲です。

いわゆるAメロ、Bメロ、サビの形式のよくある形の曲構造で、そういう意味でも普段こういう電子音楽を聴かない方でも聴きやすい曲かもですね。

「puppy love」というのは「幼い恋」という意味。

内容的にもそのような感じで、素直に「好き」を表現出来ない小学生高学年から高校生までぐらいが歌の主人公の対象になりそうです。

これから歌の登場人物の恋の行方はどうなるのかなって、いう期待感を持たせるような一曲で、その期待感はPerfumeのこれからにも重なってアルバムラストに、ふさわしい一曲です。

歌の彼らもPerfumeにも、「これからがある」と予感させて終わらせる見事な幕引きです。

  まとめ

よくこれだけの良質なポップソングを用意してまとめれたなと。

そしてなんといってもアイドルと電子音楽っていうコンセプトの凄さですね。

21世紀の日本のポップの名盤だとおもいます。

それだけ内容の事はあって、YMO以来のテクノアーティストオリコン1位の快挙を成し遂げたアルバムでもあります。

お茶の間にも浸透したテクノアーティストってYMO以外で、パッと思いつくのは電気グルーヴなんですけど、彼らの最大のヒット作『A』はオリコン3位でした。

また「ポリリズム」みたいにまだ今日のPerfumeとは距離がある曲もあって、ドキュメントとしても興味深い一作です。

未聴の方は是非!

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