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ジョニ・ミッチェル:デビュー作から70年代の傑作群までの全アルバムレビュー

60年代のビートルズボブ・ディラン、80年代のプリンスや70年代のデヴィッド・ボウイ、スティーヴィー・ワンダーのように名作を連発し続けて、当時の音楽表現を常に更新し続けてきた時期を持つアーティストが、数はかなり限られますが一定数います。

今回はそんな特別なアーティストと言えるカナダのシンガーソングライター、ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)の全盛期で、名盤を連発していたと言われる70年代のアルバムの全レビューを行ってみました。ついでに60年代の作品2枚についても書いています。

また今回は自分なりに点数をつけてみました。これは作品の一般的な評価とは異なる完全に好みでつけた点数になります。まあ、点数については参考までにということでお楽しみください。

Song to a Seagull (1968)

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記念すべきデビューアルバム。基本的にジョニの歌とギターのみのシンプルな作り。プロデュースはデヴィッド・グロスビー。ナチュラルな音響を収めるためにスタジオの空気を拾うマイクを設置した結果ノイズまで拾ってしまい、ノイズをカットするためにフラットな音像になってしまったとあるが、あまり気にならない。サイモン&ガーファンクル『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』に近い雰囲気がある。ジョニっぽい凝ったリズムやアレンジはまだまだ前面には出ていない。そういう意味ではあまりくせもなく結構聴きやすいかも。個人的にはかなり好みなので10点中8点

Clouds (1969)

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作風としては前作の延長線上にあり、引き続き基本的にジョニの歌とギターのみの一枚。ただ、前作の深いエコーがかかったようなサウンドスケープは鳴りを潜めて、よりナチュラルな響きになっている。ジョニの歌とギターがシンプルに楽しめる一枚かも。代表曲の「Both Sides Now」収録。個人的には前作の方が好きかつ、ジョニの特性もまだまだ出てきてない気もするので6/10点(一般的な評価はもっと高い)。

Ladies of the Canyon (1970)

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70年代の傑作群の始まりとして認知されている一枚で、確かに本作から「ああ自分はいまジョニ・ミッチェルのアルバムを聴いてるんだ」と思えるジョニ節がさく裂している。アコギではなくピアノをフィーチャーした弾き語りがはいってきたり、ジャズっぽっさも入ってきたりして後の作風につながる要素がすでに出てきている。代表曲「Big Yellow Taxi」「Woodstock」「The Circle Game」収録。8/10点

Blue (1971)

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最高傑作の一つとして挙げられることが多い代表作。もともと評価の高い一作だが、近年再評価され、2022年のRolling Stoneのオールタイムベストでは3位という評価だった。印象的なフレーズの繰り返しだったり、ぱっと飛び込んでくるキラーフレーズがかなり多く、作詞面でも脂がのっている。9/10点

For the Roses (1972)

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70年代の傑作群のなかでは比較的言及されることが少ない一枚。前作に比べるとすっきりとまとまっていて、サウンドとしては生々しさは後退し、のっぺりとした印象。楽器が増えて、音響処理も初期のころに近く、深め。音響的には後の「ヒジュラ」につながりそうだが、「ヒジュラ」より洗練されてはいない印象なので7/10点

Court and Spark (1974)

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『ブルー』と並んで批評的な評価が高い一作。他の楽器による演奏がデフォルトになった完全にフォークロック的な作風になった一枚。プラス今まで小出しに出ていたジャズ的な要素も本格的に表出するようになってきたし、クラシックぽさを感じる場面も。全体的なクオリティも高い。ただ『ブルー』にあった突き抜けるような興奮が抑制された感もあり個人的には8/10点

Miles of Aisles (1974)

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『コート・アンド・スパーク』リリース後のツアーを収めた初のライブ盤。全米2位のヒットになった。選曲もこれまでのベスト的な内容になっている。アルバムの編成を受けて、フュージョン、ジャズよりのアレンジになっていて、いくつかの曲には大胆なアレンジがなされている。とはいえ、基本的にはジョニの歌とギターが中心になっていて、それらの良さは損なわれていない。メロディーやリズムを崩してたりする曲もあるので、その曲に思い入れがある人にはいまいちに思える曲もあるかもしれない。7/10点

The Hissing of Summer Lawns (1975)

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前作のジャズ路線が更に推し進められた一曲で、パーカッションを大胆にフィーチャーした一曲があったり、アレンジ中心で聴かせる曲も出てきた一枚。8/10点

Hejira (1976)

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前作とは音響面で趣が変わった8枚目。ジョニのギターにはエフェクトがかかっていて、トレードマークともいえる独特のチューニングもあって、不思議な響きがある。そこに今回のジャコ・パストリアスのフレットレスべースの浮遊感と存在感があるベースも絡んできており、ジョニの歌は妙なエフェクトなしで入っていて独特の響きがある。今までキーとなるフレーズは矢張り本人から出るものがメインだった気がする。しかし、ジャコのベースももう一人の主役然としているし、ニール・ヤングのハーモニカだったり、ほかのミュージシャンの演奏にも軸足がちゃんとのっていて、かつバランスがよい。また、前述したサウンドによって、得も言われぬマジカルなテイスト、雰囲気がある。個人的には最高傑作だと思う。10/10点

Don Juan’s Reckless Daughter (1977)

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レコードでは2枚組になった大作。ジャズっぽい曲あり、クラシックのテイストが入った組曲的大作あり、パーカッション主体の曲あり、前作同様ジャコ・パストリアスのベースをフィーチャーした曲ありと、今までの作風を全部小出しにしてきたような印象もある。散漫な印象もあり、一般的評価は他の70年代のアルバムに比べて低めだが、個人的には好き。8/10点

Mingus (1979)

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タイトル通りチャールズ・ミンガスへの追悼盤となったアルバム。もともとミンガスとのコラボ作として企画されていたが、彼がなくなったこともあり、録音が素材として使われているものの、結果的には他のミュージシャンたちを集めて作り直した一枚。コンセプト通りジョニの音楽性のジャズ要素が強調された一枚で、結構聴きやすい。ミンガス的なユーモアも端々に感じる。ジョニの凄みが前面に出た作品ではないため、評価は賛か、まあまあ、かにわかれるが、個人的には好きな方。8/10点

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