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高中正義『SEYCHELLES』一瞬で夏の気分に…。トロピカルムード満点の傑作アルバム。

2019/08/17
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SEYCHELLES

皆さんは夏のアルバムと言えば何を思い浮かべるでしょうか。

代表的なとこでいけば、大滝詠一の1981年に発表された『ロング・バケイション』や山下達郎の1982年に発表された『For You』などを思い浮かべるのではないでしょうか。

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そして夏のバンド言えばやはりTUBEやサザンオールスターズを思い浮かべるのではないでしょうか。

山下達郎も今ではクリスマスのイメージが強くなってしまいましたが、昔は夏と言えば山下達郎でした。

そして、このメンツの中で一人付け加えたいとすれば、今回紹介する高中正義なんですね。

そんな高中正義のアルバムでも、「夏」ということに限定するのであれば、トロピカルムードあふれる傑作、デビューソロアルバム、『SEYCHELLES』(セイシェルズ)が1番のオススメです

前述した『ロング・バケイション』や『For You』に比べると知名度やセールス面では確かに落ちますが、かなり「夏力の高い」アルバムですので、聴かれないのはもったいないと思います。

今回はその魅力を語っていきます。



『SEYCHELLES』とは

タイトルになっているセイシェルズとはセイシェル諸島、アフリカ大陸の東、インド洋に浮かぶ島々のことです。南に浮かぶトロピカルムードあふれる島々を思って作られたアルバムなんですね。

発表されたのは1976年。なんといまから40年以上前の作品です。なんだ古いから聴くのやめようと思ったそこのあなた。

確かにアナログ盤ではB面にあたる5から8曲目は時代を感じる曲もあるものの、いまでも新鮮な気持ちで聴けるアルバムなんです。

アルバム発表までの背景

高中正義は1953年生まれのギタリスト。

最初はフライドエッグと言うバンドでベーシストとしてデビューしました。

このフライドエッグと言うバンドは、つのだ☆ひろがドラムでいたり、元祖早弾きギタリストと呼ばれる成毛滋が在籍していたことで有名なバンドです。

高中正義はもともとギタリストだった人なんですけど、何故かこのバンドではベースを担当しています。

その後本業のギタリストに戻りまして、サディスティック・ミカ・バンドに加入します。

このサディスティック・ミカ・バンド、フォーク・クルセダーズの「帰ってきたヨッパライ」で既に大ヒット飛ばしていた加藤和彦がボーカリストのミカを誘って結成したバンドでもあります。2006年にはボーカルに木村カエラを迎えて再結成しました。

またこのバンドには後にYMOで活躍する高橋幸宏が在籍していたバンドでもあります。

サディスティックミカバンドは次々と優れた作品を発表するも残念ながら75年にいったん解散してしまいます。

その後メンバーのほとんどはサディスティックスと言うバンドをそのまま結成。当然その中に高中正義も含まれていました。今回紹介する彼のデビューアルバムはそんな背景の中1976年7月に発表されました。

『SEYCHELLES』のすごいところ3つ

さてこのアルバムですがどんなアルバムなのでしょうか主なセールスポイントは3つあります。

1. 夏ムード満点の楽曲群でセイシェル諸島へ、トリップ

まず第一には、前述したように夏全開のトロピカルムードあふれる名曲が聴けるところです。

とくにアナログ時代A面だった1から4曲目までの流れはすばらしいの一言です。

家にいながら南国のリゾートムードが味わえてしまいます。

内容については後ほど詳しく触れたいと思います。

2. 飽きの来ないバラエティ豊かでポップなアルバム

ギタリストのアルバムであるにもかかわらず、「俺が俺が」と言うようなギタリスト特有の、ギター弾きまくりのアルバムではありません。ギタリストのアルバムってしばしギターに興味のある人以外はちょっと楽しめないようなものもあると思うんです。

でも本作はそうではありません。ギターに興味がない人でも十分楽しめる内容になってます。

メロディー重視でぐいぐいこない聴き易いギターです。そして歌物の曲もちゃんと入っていて本人がボーカルもとってます。

だからバラエティー豊かで、聴いていて飽きないんですね。

もちろん聴き込んでも楽しいし、BGMとしても最適だと思います。

3.メンバーの豪華さ

『セイシェルズ』は参加しているメンバーがとにかく豪華ですごいんです。

それぞれのメンバーが力量はもちろんのことクリエイティビティーが非常に高いのでそれぞれの演奏での聴きどころがたくさんあります。その結果非常に音楽的で楽しめる演奏が詰まってます。

前述した聴きこんでも楽しいの根拠はここにあります。

それでは具体的な曲の紹介に入りましょう。



わくわくする夏ムード満点のA面とテイストの違う大人な雰囲気のB面

76年発表ということで、当然レコードでの発売でした。ということでA面、B面と二つのパートに自然に分かれることになります。

で当時はA面とB面とで曲の雰囲気を変えたりすることも一般的でした。

このアルバムも当時のA面にあたる1から4曲目と、B面にあたる、5から8曲目では雰囲気が違います。

それではA面、B面それぞれ解説していきましょう。

トロピカルムードあふれるA面

A面はアルバムタイトル通りの、セイシェル諸島をテーマとした、トロピカルムードあふれる、夏にぴったりの名曲が4曲続くゴージャスな内容になっています。

本作はこのA面のためにあるといっても過言ではないかもしれません。

たった一枚のアルバムでセイシェル諸島へと連れて行ってくれるのです。

  • 1. OH! TENGO SUERTE

セイシェル諸島への旅の始まりを告げる、アルバム一発目の曲。

アコースティックな導入部から始まって、リズム隊を迎えたリゾートサウンドがA面全体の雰囲気を予告します。

2分を過ぎたところで、4分ほどの曲ですが、3分弱のところでやっとスペイン語の歌が入っていきます。

ボーカルは後に大空はるみとして歌手活動をするTAN TAN。本アルバムでは彼女のコーラスがいたるところで効果的に機能します。

歌詞は「なんて幸せなんだ、セイシェル諸島への切符を買った」というようなことをうたっています。

  • 2.トーキョー・レギー

1曲目の終わりから間髪いれずに始まる、本人歌唱による歌もの曲。作詞はミカバンドからの盟友、高橋幸宏。本編での作詞はすべて高橋幸宏が担当しています。夏が来る開放感とワクワク感が詰まったサウンド。高中正義の季節ものの歌もの曲は他にもあって、『Jolly Jive』というアルバムには「パラレルターン」というスキーの曲があります。

  • 3.蜃気楼の島へ

2曲目とは打って変わってゆったりとしたテンポのリゾートムードあふれるインスト曲。

インスト曲ですが、ギターをぐいぐい弾きまくるのではなく、基本的にメロディ、雰囲気を聴かせるギターワークです。

それはこのアルバム全体に共通するギターのあり方でもあります。

次の曲へと期待を持たせるようなそんな終わり方。

なんとなく次の曲と地続き感があります。

  • 4.憧れのセーシェル諸島

いよいよセイシェル諸島(当時はこと曲のタイトルのように「セーシェル」という表記が一般的だったのでしょう)に到着です。

これは本作のハイライト、ベストトラックといって間違いないでしょう。

聴いているだけでも、ウキウキする南国リゾート気分が味わえます。

インスト曲ですが歌のようにきっちりと作りこまれたメロディがあって、Aメロ、Bメロ、サビ、のような構成があります。

まず歌でいえばAメロにあたる部分、ゆったりとした夏の昼下がりリゾートのような伸びやかなメロディがギターによって奏でられ、エレピとベースによってよりムードが高められます。

本作のキーボードは今井裕。サディスティック・ミカ・バンド時代からのバンドメイトです。後のブルーハーツなどのプロデュースも務めます。

このAメロ時点で夢見心地なサウンドが展開されるのですが曲はまだまだ続きます。

次の展開ではギターは一旦引いて1番ではエレピ、2番ではTAN TANのコーラスで落ち着いた雰囲気が演出されます。

そしてサビではギターによる軽快なメロディが復活し、ドラムがリズムを引っ張ってウキウキするような楽しいノリを演出し、極上のリゾートサウンドがここに完成するのです。

空調の効いた部屋でリゾート気分を楽しむのもよし、これから海にいくドライブの車のなかで聴いてもよしの名曲です。



夜の雰囲気なB面

夏、リゾートサウンドのA面と対比すると、B面は夜の大人っぽい雰囲気がある展開を見せます。

正直A面にくらべると統一性やパンチ力にかけますが、それぞれ魅力のある楽曲が詰まっています。

CDなどで聴く際は4曲目と連続して聴かず、一呼吸おいてから聴いてもらいたいですね。

それぐらい雰囲気が異なります。

  • 5.「FUNKEE MAH-CHAN」

夏っぽい雰囲気とは変わって、

タイトルのマーちゃんとは高中正義のことでしょうが、どちらかといえば主役は曲を引っ張っている後藤次利のベースと林立夫のドラムです。

後藤次利はサディスティックスやミカバンドでも一緒の仲でした。

実はこの後に作曲者として秋元康と組んで、AKB48や、とんねるずに曲を提供してヒットさせています。

林立夫はユーミンや大瀧詠一、井上陽水のヒットアルバムで叩いている伝説のセッションミュージシャンです。

  • 6.「サヨナラ・・・FUJIさん」

ムード歌謡的雰囲気の漂う大人っぽい曲。これも本人歌唱です。飛びぬけて歌が旨いわけではありませんが、味のある歌で僕は好きです。作詞は高橋幸宏。正直他の曲に比べると時代を感じる曲ですが、不思議な魅力があって結構なんども聴いてしまいます。

  • 7.「バードアイランド急行」

なんとなく夜っぽいアダルトな雰囲気の曲が続きます。初期のスティーリーダンっぽい感じがするのは僕だけでしょうか。この曲もギターは派手に暴れまわるでもなく淡々とメロディーを弾き続けて行きます。この曲でもリズム隊が主役に聴こえますね。

  • 8.「TROPIC BIRDS」

最後はアウトロ的な小品です。実はこの曲井上陽水がコーラスで参加しています。こういうところも豪華ですね。「憧れのセーシェル諸島」のメロディをなぞって終わります。



まとめ

夏アルバムとしても非常に優れている今作。是非一度は聴いていただきたいです。

全曲作曲は高中正義ですが、プロデュース、編曲も彼自身が行っています。

そういったプレイヤーとしての自分から一歩はなれた視点があったから、トータルの完成度重視のギタープレイになっているのですね。

引くところでは一歩引いて他のパートに華をもたせています。

曲をいかによく聴かせるかに重点をおいたギターワークになっているんです。

ギタリストとしては、このソロ作よりもサディスティック・ミカ・バンドの名盤『黒船』のほうが弾きまくりの熱いギターソロが堪能できます。

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興味をもたれた方はそちらも是非。

参加しているメンバーも、プレイヤーとしてだけでなく、後々も裏方として日本の音楽界を支えていった豪華な面子ばかりです。

そんな高中正義のデビューアルバム、特に夏は聴かない手はありません。是非どうぞ。

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(文中敬称略)

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