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ホワイトアルバムは本当に代表作なのか?もっともビートルズっぽくないアルバム『ザ・ビートルズ』

2019/01/05
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バンドにとって「らしさ」とはなにか。そのバンドを規定するような特徴、音はあるのか。

いろいろ意見はあるかと思います。

ザ・ビートルズが1968年に発表した「最もビートルズらしくないアルバム」『ザ・ビートルズ』、通称ホワイト・アルバムを紹介したいと思います。




『ザ・ビートルズ』とはどんなアルバムか


『ザ・ビートルズ』は1968年に発表された、ビートルズ9枚目のアルバムです(アメリカ編集盤だった『マジカル・ミステリー・ツアー』を含めると10作目)。

2枚組アルバムで全30曲。

2枚組にもかかわらずイギリスでは7週連続1位を獲得。

アメリカではリリースから4日ですでに330万枚もの店頭出荷があり、アメリカだけでも当時950万枚以上売れました。

デザイン

右のやや下よりの位置にただエンボス加工されたThe BEATLESという文字が書いてあるだけ。

あとは真っ白。

非常にシンプルなデザインで、これは本当にデザインと言えるのかも不思議になってしまう。

ただそのThe BEATLESという文字は少し斜めっていて、絶妙な位置にある。

ただの白地に文字を入れただけともとれるけれど、立派に「デザイン」されているんです。

とにかくその真っ白なデザイン。いまでこそ珍しくはないと思いますが、当時は凄く斬新でした。

アメリカで起きていたヒッピームーブメントの兼ね合いもあり、 当時はサイケデリックで派手なアルバムジャケットが多かったのです。

前作にあたる『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』も派手で情報量の多いデザインでした。

そこであえて真逆をついてきたので非常にインパクトがあったんですね。

デザインを担当したのはイギリスの画家、リチャード・ハミルトン。

彼はポップアートの最初期の代表的な作品である『一体何が今日の家庭をこれほどに変え、魅力あるものにしているのか』(Just what is it that makes today’s homes so different, so appealing?)で知られています。

レコード盤ではそれぞれのレコードにシリアルナンバーが振られました。

残念ながら筆者が持っている1998年版のCDでは、「The Beatles」の文字が立体感のないただの灰色の文字になっていて、文字が水平にキチンとならんでいて、非常に退屈なデザインになってます。

これでは意図されたものとはほど遠いし、明らかに原作の良さを殺してしまっていますね。

そんなわけでこの真っ白なジャケットのアルバムは、正式名称である『ザ・ビートルズ』ではなく「ホワイト・アルバム」と呼ばれるようになったのです。

ホワイト・アルバムの評価は?

ビートルズのなかでもこれほど評価の分かれるアルバムはないでしょう。

肯定派はほめるポイントは下記のとおりです。

  1. 実験的で先進性のあった楽曲が与えた後世への影響
  2. やりたいことだけをやりたいように詰め込んだ、その幅広い音楽性(スカ、カントリー、へビィメタル、ブルース、現代音楽 etc…)
  3. 今までのかっちりとしたビートルズサウンドではない、「生の」「無加工の」ビートルズが聴けるという希少性

対して否定派の意見は(決して全否定しているわけではもちろんないのですが)、

  1. 全員が参加している曲が少なく、ソロ作の寄せ集めになっている。
  2. 曲をしぼり込まなかったため、クオリティのばらつきが激しい。

などといって批判します。

面白いのは時代によって評価が変わることです。

僕が子供の時はどちらかというと否定的な意見が多かった気がします。

ビートルズは夢中になった僕は順に全てのアルバムを聴いていったのですが、一番最後に聞いたのはこのアルバムでした。

現在ではこのアルバムはかなり再評価されており、いまではビートルズのアルバムの中でもかなり評価が高く、最重要作のひとつとして認知されています。

それでは僕自身のホワイトアルバムに対する私見は後ほど書くとして、何曲か抜粋して見ていきましょう。




曲紹介

  • 「バック・イン・ザ・U.S.S.R」”Back in the U.S.S.R.”

U.S.S.RとはUnion of Soviet Socialist Republicsの略でソビエト連邦、現在のロシアを中心とした連邦国家のこと。

曲のタイトルはチャック・ベリーの「バック・イン・ザ・USA」をもじったもの。

ブリッジ部分ではビーチボーイズの「カリフォルニア・ガールズ」をパロディにしたり、レイ・チャールズによるカバーが有名な「ジョージア・オン・マイ・マインド」が曲中にでてきたりする。

リンゴ不在の時の録音のため、ドラムはポール。

評価が高いポールのドラムですが、リンゴのドラムでも聴いてみたかったですね。

  • 「オブラディオブラダ」”Ob-La-Di,Ob-La-Da”

ポール・マッカートニーのペンによる、ビートルズ流のカリプソ、レゲエソング。

あまりのその無邪気さ、明るさに、不意をつかれて涙が出てきてしまったことがあります。

  • 「ザ・コンティニューイング・ストーリー・オブ・バンガロー・ビル」”The Continuing Story of Bungalow Bill”

フラメンコっぽいギターのイントロが入る曲。

オノ・ヨーコが歌っている部分があります。

この曲のエンディングと次の「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」のつながりがめちゃ格好いい。

  • 「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」”While My Guitar Gently Weeps”

ジョージの数ある代表曲のなかでもベストひとつ。

リード・ギターはエリック・クラプトン。

本作からジョージの創作性が一気に花開く時代が始まっていきます。

  • 「ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」“Happiness is a Warm Gun”

ジョンのペンによる、曲の長さ自体は短いが3部構成になっている曲。

レディオヘッドの「パラノイド・アンドロイド」の曲構成に影響を与えた曲。

  • 「ブラックバード」“Blackbird”

ポールによるギターの弾き語りナンバー。

アコースティックギターの練習曲としてもよく取り上げられる小品で、筆者も昔よく練習しました。

ブラックバードそのものはクロツグミという鳥のことですが、この曲は黒人開放運動のことについて歌った曲です。

  • 「バースデイ」”Birthday”

にぎやかなロックナンバー。
このようにはっちゃけたビートルズや荒々しいビートルズが多く聴けるのも本作の魅力。

  • 「エヴリボディーズ・ゴット・サムシング・トゥ・ハイド・エクセプト・ミー・アンド・マイ・モンキー」”Everybody’s Got Something to Hide Except Me and My Monkey”

ジョン作によるハードロックナンバー。ビートルズで1番長い曲名。

ビートルズはこういう荒々しいロック曲も書けるんだぞと、ビートルズに対して大人しいイメージを抱いているひとにぜひ聴いてほしいナンバー。

  • 「ヘルター・スケルター」”Helter Skelter”

ポール作の激しいロックナンバー。ザ・フーをお手本にしてつくられたという。

もっとも最初期のヘビーメタル曲といわれたりしています。が、ちょっとその見方は僕は懐疑的で、もっとそれにふさわしい曲はこれ以前に沢山ある気がします。

ポールの弁によると出来る限りラウドでダーティなサウンドを目指したとのことですが、なんとなくお上品なかんじがするんですよね。声質の問題でしょうか。歌い方もやっぱり上品な感じがしてしまいます。

これよりだったらシングル「レヴォリューション」の方がヘビーです。それこそお手本になったザ・フーの方が何倍もラウドでダーティだし、僕はキンクスの「ユー・リアリー・ガット・ミー」をメタル・ハードロックの最初期曲と位置づけたいですね。

僕はオリジナルの「ヘルター・スケルター」より、日本のメタル・ハードロックバンドのVOW WOWのカバーバージョンの方が好きです。古参のビートルズファンに怒られそうですが。

  • 「レヴォリューション1」 “Revolution 1”

シングル、「ヘイ・ジュード」のB面曲「レヴォリューション」のスローバージョン。

シングルの激しいロック調のアレンジとは打って変わってアコースティックギターをベースにしているゆったりとした演奏。

いかにもジョン・レノンらしい詩作が独特でいいですが、僕は断然シングルバージョンの方が好きですので、この曲についてはいずれシングル盤の「レヴォリューション」を語るときに語りたいとおもいます。

  • 「レヴォリューション9」”Revolution 9”

8分を超えるビートルズの曲の中で1番長い曲。歌や明確な演奏もなく、現代音楽やサウンドコラージュに近い。

ビートルズの中でも一、二を争う不人気曲です(笑)。

ビートルズの曲をワーストからベストまで選ぼうという企画では、大抵下位か場合によっては再開に選ばれることが大半で、その理由はポールとリンゴが参加していないことや、曲の体裁をとっていないなどの論拠によるもの。

しかしどうなんでしょう。この曲が他でもないビートルズのアルバムに入っていることで「こういう音楽もあるんだな」ということの認知に対しては、かなり役立ったのではないでしょうか。

そういった意味でも「聴く」に値するとおもいますし、重要な曲だと思います。

その影響力がいかほどなのかちょっと図れませんが。

予断ですがファッションブランドNUMBER (N)INEのブランド名はここから取られました。




「ビートルズらしさ」とはなにか

曲紹介前に、本作には肯定派と否定派がきっぱりわかれやすいということを書きました。

残念ながら、僕は後者の否定派に近いです。理由はやはり曲そのものは悪くないのですが、アルバムとして見たとき、まとまりに欠くのと、ビートルズらしさをあまり感じられず、それぞれのソロのように聴こえるという理由からです。

それではビートルズらしさとは一体なんなのでしょうか。

それを説明するのにうってつけの曲があります。

「フリー・アズ・ア・バード」と「リアル・ラヴ」

1995年にリリースされた「フリー・アズ・ア・バード」(Free as a Bird) 、続く1996年リリースの「リアル・ラヴ」(Real Love) 、は解散後から実に四半世紀ぶりのビートルズの新曲としてリリースされました。

ジョン・レノン亡き後、彼の未発表曲を元に製作されたこの2曲。

誰が聞いてもこれはビートルズの新曲だ、と納得してもらうハードルは相当高かったと思います。

これは再結成したバンドが新曲を発表するときに最初にぶち当たる壁だとおもうのですが、さすがビートルズ。

この壁を難なく超えてきました。


特に第一弾として発表された「フリー・アズ・ア・バード」はこれでもか、というぐらいビートルズっぽさを感じるできばえになっています。

まずイントロはいきなりリンゴ・スターの独特な間とサウンドのドラムです。

続いて入るジョージのスライドギターのフレーズは、まあ本人がやっているから当然なんですが、「ああ、これこれ、これだよね、ジョージのギター」というようなフレーズ。

このようにイントロですでに「ビートルズ」っぽい要素が満載。

そのあとでジョンの歌が始まり、ブリッジではポールが歌います。

プロデューサーはオリジナルメンバーの3人に加えてELOのジェフ・リンが担当。

彼もELOの活動を通して、ほとんどパロディとでも揶揄されかねないようなビートルズっぽいサウンドを追求したきた人物でしたので、この人選も適切でした。


翌年発表された「リアル・ラブ」はもっと自由に作られた雰囲気で、ジョンのデモ音源を最大限活かした仕上がりになっています。

「フリーアズアバード」と比べると露骨なビートルズ的要素は少なめです。

ポールが歌うパートもない。ビートルズの新曲というより、ジョン・レノンの新曲にもとビートルズの面々がゲスト参加しているように聴こえます。

曲としては悪くないどころか名曲だとおもいますが、今一つフリーアズアバードより人気がなかったり評価が低かったりするはそのせいではないでしょうか。

おそらく発表順が逆だったらこのプロジェクトの受けとめられかたも、もっと違っていただろうとおもいます。

「これはビートルズの新曲として認められない」

という声が大きくなっていたのではないでしょうか。

ビートルズらしさとは

こうしてこの2曲を聴いてみると、ジョン・レノン、ポールマッカートニー、ジョージ・ハリソン、リンゴ・スター、4人のそれぞれの強烈な個性がビートルズをビートルズたらしめていたんだなと改めて思い知らされます。

それぞれ固有の音、リズム、がある。

そして、それががっちり重なるときにあのビートルズのマジックがうまれるのです。

その4人の個性がぶつかりあう、その輝きこそを僕はビートルズの核であると、とらえます。

個人がばらばらで録音したり、メンバーが欠けている曲が多かったりのホワイト・アルバムはあのときの4人が感じられず、どうしても寂しく感じられてしまうのです。




まとめ

いかがだったでしょうか。

ビートルズの入門編としては不適切かもしれませんが、あなたがビートルズというグループに対してどう考えているのか、試金石になるようなアルバムだと思っています。

4人の息があってぴったりとまとまっている、そんなビートルズが好きな筆者としては非常に複雑な思いをいだいてしまうアルバムです。

しかし、名曲、後世に大きな影響を与えた曲が沢山詰まっているアルバムであることは事実です。

ビートルズを好きな人はもちろん、これから真面目に聴いていこうという人には避けられないアルバムだとおもいます。

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