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シンディ・ローパー、ソロデビュー作にて80’sポップの名盤『シーズ・ソー・アンユージュアル』

2019/01/03
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こんにちは、今日はシンディ・ローパー(Cyndi Lauper)の1983年発表の大ヒットソロ・デビューアルバム『シーズ・ソー・アンユージュアル』(原題:She’s So Unusual 旧邦題:N.Yダンステリア)を紹介します。

突然ですが、すぐれたポップソングってどういうものでしょうか。

親しみやすさがあって、「嬉しい」とか「切ない」とか「楽しい」とか、思わせてくれるもの。

そういうものではないでしょうか。

今回紹介する『シーズ・ソー・アンユージュアル』。

その観点からいったら、もう教科書のようなアルバムです。

聴き手に様々な感情を呼び起こしてくれる、優れたポップレコードです。

いまは80年代っぽい音がまた流行っていますが、80年代ポップスの名盤としてもう名高い作品でもあります。

「タイム・アフター・タイム」”Time After Time”、「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」”Girls Just Want to Have Fun” など、「聴いたことある!」という方は多いのではないでしょうか。

セールスは全米だけで累計600万枚、全世界では1,400万枚ものセールス、全米トップ5に入るシングルヒット曲をなんと4曲も収録しています。

セールス面の成功はさて置き、もう30年以上も前のアルバムにもかかわらず、今でも聴き続けられ、愛され続けられているアルバムなんです。

どうしてこれだけ売れたのか、今なお愛され続けられているのか、アルバム製作の背景に何があったのか、それらの秘密を紐解きながら紹介していきたいとおもいます。



ソロデビューまでの苦労:訴訟、自己破産、バンド解散

シンディ・ローパーは1953年生まれ、ニューヨークブルックリン出身のポップシンガーです。

1978年に自らのバンドBlue Angelでデビュー、アルバムをリリースします。

評価はされたものの売れ行きは芳しくありませんでした。

さらには解雇したマネージャーに訴えられ、自己破産に追い込まれてしまいます。

結局それが原因となり、バンドは解散してしまいます。

しかしシンディはそれでもあきらめずに下積みをつんで、後に恋人兼マネージャーになったデビッド・ウルフに見出されて再びソロとしてデビューします。

このとき彼女はすでに30歳。

ポップシンガーとしては遅咲きです。

しかしそのソロデビューアルバム、『シーズ・ソー・アンユージュアル』は大ヒット、彼女はいきなり時代を代表するポップシンガーの座を獲得したのです。

衝撃のソロデビュー作『シーズ・ソー・アンユージュアル』


全米トップ5に入るシングルヒット曲を4曲も連発し、アルバムも何百万枚も売り上げた。

どうしてソロ・デビューでそんなにも大成功を収めることが出来たのでしょうか。

その回答として、簡単にいってしまうと、「いい曲」が「いいアレンジ」で演奏されている、そんな曲がたっぷり詰まっている、っていうこと。それにつきるんですね。

POPな曲が沢山つまっているから聴いていて心地よかったり楽しくなるのはもちろんなんですが、とにかく感情が揺さぶられるアルバムなんです。

だからこそ聴き手にとって心に残るアルバムだし、僕にとってもそうなんですが、大事なアルバムって思えてしまうんです。

「いい曲」が「いいアレンジ」で演奏されている、

そんな曲がたっぷり詰まっている、

そりゃいいアルバムが出来るだろうし、

みんな目指してるところだし、そんな簡単にできたら苦労しないじゃん

とおもうかも知れません。

実際そのとおりです。

でもこのアルバムにはあまり知られていない事実があるんです。

その事実がいい曲が沢山詰まっているという理由でもあるんです。

実はカバー曲が多いアルバム

このアルバム、知っている人はあまりそういうイメージはないでしょうが、

実は10曲中半数以上の6曲がカバーソングなんですね。

  • 「マネー・チェンジズ・エヴリシング」 “Money Changes Everything” 原曲:ザ・ブレインズ
  • 「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」”Girls Just Want to Have Fun” 原曲:ロバート・ハザード
  • 「ホエン・ユー・ワー・マイン」”When You Were Mine” 原曲:プリンス
  • 「オール・スルー・ザ・ナイト」”All Through the Night” 原曲:ジュールズ・シアー
  • 「ヒーズ・ソー・アンユージュアル」”He’s So Unusual” 原曲:1920年代の古いポップス
  • 「イェー、イェー」”Yeah Yeah”原曲:ミカエル・リックフォース

あんまりカバー曲のイメージが強くないのは、プリンスの「ホエン・ユー・ワー・マイン」は別として、それほど有名ではない曲をカバーしているからでしょう。

なるほど、そりゃいい曲を沢山集めて、選りすぐっていけば、いいアルバムは出来るでしょう。

ではそれだけなのか。

というとそうではないんですね。

せっかくいい曲を集めても表現力が乏しければもちろんいいものは出来ないし、シンディと彼女のチームの場合は、アレンジ力はもとより、曲を解釈して再プロデュースしていく能力に長けていたのです。

シンディの代表曲、もとい80’sを代表するヒット曲のひとつとして知られる、「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」がカバー曲だなんて、もともとこの曲を知っている人でも半数以上の人は知らなかった事実ではないでしょうか。

あまりにもシンディのカバーが板についていて、完全に自分の曲としてものにしてしまっているからです。

ロバート・ハザードによって書かれ、1979年にデモとして録音されたままお蔵入りになっていたこの曲は、なんと、もともと男性側の目線でかかれたものでした。

シンディはロバートに許可をとってこれを女性目線に一部歌詞を書き直します。

もともとの曲の歌詞としては「女の子たちって楽しいことが大好きで、まあそういうものだよね…」的なニュアンスでした。

それをシンディは、「女の子たちだって楽しみたいんだ、好きに楽しもう!過度な干渉や束縛はやめて」という「主張」であり、ポジティブなメッセージに見事に転換しているのです。

また「ホエン・ユー・ワー・マイン」は、プリンスのオリジナルバージョンではシンディのに比べると結構淡々とうたっていて、結構アレンジもきらびやかなんです。

が、シンディバージョンはバックのアレンジを落ち着かせて、ボーカルはよりエモーショナルにして、切なくて苦しい感じがよりダイレクトに伝わるようになっています。

「オール・スルー・ザ・ナイト」はジュールズ・シアーの原曲では明るい曲調ですが、シンディ版ではテンポも落とし、スローバラードとして見事に仕上げています。

このようにシンディは解釈を加えたり、アレンジや歌の表現を変えることで、原曲が持つ意味や感情を増幅したり、別のニュアンスを付け加えたりします。

そうすることでオリジナルであるかのように、彼女のパーソナリティに曲を引き寄せたり、曲自体の強度を上げたりしているんですね。

アレンジに関しては実は強力なチームメイトがいて、本作発表後にブレイクするザ・フーターズ(The Hooters)の中心メンバー、ロブ・ハイマン(本作ではギター、ベース、サックス、コーラス)、エリック・バジリアン(キーボード、コーラス)、彼らと親交のあった本作のプロデューサーのリック・チャートフと共同でアレンジをおこなっています。

もともといい曲をさらに解釈力とアレンジ力によってさらに強力な曲として再プロデュースしている、そんな曲が沢山はいっているからこんなにもすばらしい完成度のアルバムであり、ヒットもしたんです。

ではこのアルバムがヒットし、シンディがシンガーとして成功したのはカバー曲とそのアレンジだけのおかげなのでしょうか。



カバーだけではない、シンディの作曲家としての実力

本作には全米Top5ヒット曲が4曲収録されていると書きましたが、そのうちの2曲、「シー・バップ」”She Bop”と「タイム・アフター・タイム」”Time After Time”は、共作ではありますがシンディ自身によって書かれた曲です。

そして「タイム・アフター・タイム」は1番チャートアクションがよかった曲であり(全米1位)、ジャズの大御所、マイルス・デイビスがカバーしたことでもしられています。

本人の実力があるということはよく分かったとおもいます。

でも大ヒット大ブレイクの原因はそれだけではもちろんありません。

それだけでは80年代を代表するポップアイコンの1人とはなりえませんでした。

それは彼女のキャラクター、パーソナリティーが魅力的、個性的だったからに他ありません

シンディ・ローパーというポップアイコン

80年代を代表する女性アーティスト、ポップアイコンといえばマドンナですが、デビュー時期が近かったこともあり、当時シンディはそのマドンナと並び称されていました

マドンナが与えたインパクトは大きく、その影響は多岐にわたります。

音楽だけでなく、ファッションやポップカルチャー、フェミニズムまで影響を与えました。

いうまでもなく巨大な存在なのですが、シンディもまたマドンナとはまた違った方向性で影響を与えてきたのです。

マドンナがこのようになりたいとか、女性にとって目指すべきあり方であるのに対してシンディの方は、個性的でいい、ありままの自分でいいと思わせてくれる存在です。

アルバムジャケットを見ればそれは一目瞭然です。

オレンジに染め上げられた奇抜なヘアスタイル。ドレスは彼女か以前働いていた古着屋でかったパーティドレス。ごちゃごちゃとアクセサリーを沢山つけています。

この写真のデザインは格好良く見えますが、ファッションとしてはスタイリッシュとはいいがたく、とても個性的で奇抜で、それでいて堂々としています。


彼女がどういう人間なのかがよくわかるのが「タイム・アフター・タイム」のプロモーションビデオ。もちろんお話の中の演技ではあるんですが。

1分30秒くらいのところですかね。彼氏のところにやってきて新しい髪型を披露するシンディ。

回想部分で前は普通のブロンドヘアだったのが真っ赤に染めて、サイドは刈り上げになっている。

それを見て彼氏はドン引きして怒り出してしまう…。

それでもその格好をやめるわけではないんですね。

それでも彼氏とは仲直りしたのかな。プロモの中ではそれでも一緒にトレーラーハウスで慎ましく暮らしていたのですが、彼女は街を旅立つ決心をします。

恋人も途中までついていきそうになるのですが、愛し合っていながらも別れることになるんですね。辛い別れですがそれでも彼女は自分らしくあるために旅立つんです。

現実のシンディは、自分のしている格好が他人にとっては奇抜で、やっぱりちょっと引かれてしまうということはちゃんと分かっているんですね。

それでも自分らしくあることを大事にしているということがここから伝わってきます。

しかも自分さえよければそれでいい人間ではないこともこのビデオから伝わってきます。

人を思いやる心が映像の端々に登場しますし、何より曲のメッセージがそうなのです。

If you’re lost you can look–and you will find me
Time after time
If you fall I will catch you–I’ll be waiting
Time after time

このアルバムではありませんが次のアルバム『トゥルー・カラーズ』の表題曲もそんなメッセージであふれています。

YouTubeのコメント欄をみてください。いかに多くの人がこの歌で励まされてきたか、それがわかります。シンディはそういうアーティストなのです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

いろいろと小難しいことも書きましたが、もちろんそういった理屈抜きで楽しめるアルバムです。

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