優れたポップソングが沢山詰まったミスチル初期の傑作『Kind of Love』

「ミスチルの最高傑作ってなんだろう?」

それほど劇的ではないですけど、実は結構音楽性を変化させてきただけに、見る観点によって評価軸は変わってきてしまうんですよね…。

よって冒頭の問いに答えるのがかなり難しいんですけど、

「優れたポップソングが沢山詰まっているアルバム」という評価軸でみたら最高傑作は二枚目の『King Of Love』なんじゃないかなと思います。

ということで今回は『Kind of Love』を詳しくみていきたいと思います。



『Kind of Love』


『Kind of Love』は1992年に発表された2ndアルバム。

前作『EVERYTHING』が7曲入りのミニアルバムだったので、今作は初のフルアルバムといえますね。

そういう意味ではデビュー作ともいえなくもない。

大ヒットを連発する前の初々しさがあるんですが、ソングライティングは既に完成されており捨て曲が無い名盤だと思います。

愛のようなものということで『Kind of Love』と名付けたらしく、基本的にほとんどラブソングです。ミスチルは本当にラブソング多いですね。内容は様々なんですけどよくこんなにラブソングがかけるなと思ってしまいます(笑)。

後に出るベスト盤『Mr.Children 1992-1995』には本作から「星になれたら」と「抱きしめたい」の2曲が収録されています。

ということでベスト盤への収録曲数は割と少なめなんですけど、内容は全然悪くないです。

むしろ冒頭で話した通り、見方によっては最高傑作とすらいえるアルバムだと思います。

それでは個々の楽曲を見ていきましょう。

1.虹の彼方へ

永遠の情熱と青春を感じるオープニングソング。

この曲は、ミスチルを聴き始めた小学生の時から、ずっと聴いているんですけど、今でも最初聴いた時のようなわくわくを感じる隠れた名曲ですね。

未来の希望や成し遂げたい夢への期待にあふれた青年の視点からの歌です。

最初からバンドだけのサウンドを重視せずに結構ホーン、シンセを大胆にフィーチャしたアレンジですね。

ミスチルってミドルエイト(最後のサビ前の部分でAメロ、Bメロと違うメロディの部分)が良い曲が多いんですが、この曲のミドルエイトも印象的ですね。

2. All By Myself


後々のダークな路線への伏線の様な曲。

まだ自分が感じている憤りや不安を具体的に表すことができずに、抽象的にでもなんでも外に出していこうとするような曲。

歌詞は桜井さんですが、曲は桜井さんとプロデューサーの小林武史さんとの共作です。

本作はミスチルの中でも最も共作が多いアルバムになっていますね。前作『EVERYTHING』の作詞作曲が全部桜井さんだけだったのに対して、今作は11曲中6曲が共作になっています。

中川さんのベースと田原さんのギターのフレーズは今作では小林武史さんが作ったらしいので、そういう意味でも全面的にプロデューサーの助けを借りて作品の品質を上げていったアルバムだと思います。



3. BLUE


打ち込みのドラムにシンセサウンドがメインのスムースなポップソング。

隠れた名曲だと思います。

意中の女性はずっと他の誰かのことを思い続けている、それでも自分は彼女が振り向いてくれるまで待ち続けるという切ないラブソング。

終わり方が最高にエモーショナルでグッときます。

4. 抱きしめたい


2ndシングル。

このアルバムでおそらく一番有名な曲で、『1/42』というライブアルバムを出したときにリバイバルヒットもしました。

ベスト盤にも収録されています。

一組のカップルのそれまでの思い出や二人のこれからへの思いを歌にした曲です。

「365日」に次いで、ミスチルファンが結婚式で流したい曲なんじゃないでしょうか。

5. グッバイ・マイ・グルーミーデイズ


本作で一番陽気でハッピー、多幸感あふれるシャッフルナンバー。

この曲も「BLUE」と同じく、小林さんとの共作でイントロとか結構複雑なコードをつかったり、展開も捻りが聴いてたりします。

意中の相手についに告白して上手くいく、その経過を描いています。

片思いの苦しいんだけど夢見心地な感じとか、OKしてもらえたり、デートのウキウキなどが描かれている底抜けに楽しいナンバーです。

6. Distance


前曲とのギャップが激しく、あるカップルの関係の終わりを描いた曲。

切ない曲ですが、一時中夢中になってずっと聴いていたぐらい好きですね。

この曲もエモーショナルなミドルエイトが素晴らしい。

ディストーションの効いたギターがイントロでフィーチャーされていたりする、普通にバンドっぽい曲だったりします。

7. 車の中でかくれてキスをしよう


本作で一番ロマンチックなラブバラード。

ギターとピアノにボーカルだけのシンプルな編成。

夜のプールに忍びこんだり、車の中でこっそりあってキスしたりとか、映画のようです。

繊細で傷つきやすいカップルのデリケートな恋愛模様が描かれている名曲。



8. 思春期の夏 〜君との恋が今も牧場に〜


作詞:桜井和寿、小林武史で作曲:鈴木英哉、小林武史というミスチルにしては珍しい組み合わせで作られた曲。

ボーカルもドラムの鈴木さんがとられています。

ほのぼのとしたカントリーテイストの楽曲で、箸休めてきなかわいらしい小品。

歌詞の中身も牧場が舞台の淡い恋心を描いたラブソング。

9. 星になれたら


JUN SKY WALKER(S)のベースで、「ゆず」のプロデュースで知られる寺岡呼人さんとの曲作。

本作のハイライトのひとつ。

ウィンド・チャイムやトライアングルの様な高音のメロディがバックでなっていて、なんとなくメルヘンチックな装いがありますね。

歌詞の柔らかな感じもそうです。

このころのミスチルはそういう童話的で牧歌的なところがありますね。

徐々にギスギスしたサウンドや歌詞になっていくのですが、初期のファンの中にはそれが嫌だった人もいるかもしれないです。

この街を出て行く事に決めたのは いつか 君と話した夢の 続きが今も捨て切れないから

夢をかなえるためにこの町を出ていく主人公の話ですが、「虹の彼方へ」に通じるところがあります。

タイトルの「星になれたら」というのはもしかしたら文字通りスターになりたいということかもしれません。

動き出した僕の夢 高い山越えて星になれたらいいな

夢をかなえるために動き出した人を応援するような歌になっています。

10. ティーンエイジ・ドリーム(I〜II)


これはこのアルバム以降のミスチルが作り出す「すごい曲」の萌芽とも言うべき大作ですね。

「普通」の当たり障りのないポップスからはみ出し始めた曲。そういう意味でも重要作ですね。

タイトルが示すとおり曲の構造は2部構成になっていて、収録時間も6分を超えています。

前半部は10代の時のあまずっぱい思い出、二度と戻れない10代の輝ける日々について回想していくという曲ですね。

かさばった部屋の荷物を一日中
かたづけていると隠れてた
想い出達が引き出しから
そっと顔を出した

この前半部だけでも十分いい曲なんですが、後半は十代が描く野望や欲求が描かれています。

歌詞もカタカナだけで表記され、桜井さんのボーカルにもディストーションのような歪んだエフェクトがかけられています。

曲調もロックなテイストが強くなります。

コノテデ セカイヲ ウゴカシテ
イチニチジュウ ワラッテイタイ

ダレモガ ミナ ナミダスルホドノ
トワノ ウタヲ ウタイタイ

フルエブルブルトマラナイホドノ
アツイキスヲ シテミタイ

たわいの無い願望と言われてしまえばそれまでなんですが、注目すべきラインは

「ダレモガ ミナ ナミダスルホドノ トワノ ウタヲ ウタイタイ」

これ桜井さんの決意表明とも取れますね。そしてこの後の大ブレイクと名曲群によって、本当にその望みをかなえていくという…。

11. いつの日にか二人で


本作最後の曲。年上の女性に片思いする青年の淡い恋心を歌ったラブソング。

ストリングスとピアノだけのシンプルなアレンジに桜井さんのボーカルだけという落ち着いたナンバー。

ミスチルのアルバムは結構こういうパターンも多いですね。

最後のひとつ前に凄い曲をもってきて、最後の曲はゆったりとした曲で締めくくるという。

7枚目の『DISCOVERY』、9枚目の『Q』、10枚目の『IT’S A WONDERFUL WORLD』なんかがそうですね。



まとめ

やはりバンドとして本格的に機能し始めるのは次作の『versus』からという感じがしますね。

『Kind of Love』はこれまで見てきたように、ほぼ桜井さんのソロ的な内容の曲だったり、バンド編成じゃない曲も多めです。

あと、ミスチルの歌詞の世界って、舞台は日本なんだろうなってものが最近は凄くおおいんですけど、面白いことにこのころは違うんですよね。

描かれるストーリーは何処のアメリカの片田舎を舞台としていそうな雰囲気があります。

メンバーはみんな東京近郊出身なのに車移動がメインになっている曲が多かったりするのも興味ぶかいですね。

4曲も車に関する描写がある曲があります。

このころはまだ描かれる世界もどこか童話的でやわらかです。

言葉にかんしても、とげとげした言い回しや過激な表現のものはほとんどありません。

童話的といったのはそれもあって、どこか守られた世界の中での話のように感じるんですね。

それもこのアルバムの魅力の一つですし、ミスチルの中で最もピュアなアルバムかもしれません。

そして例えば本作が名も知られぬバンドがたった一枚だけ残したのがこのアルバムだったら…

もっと正当な評価が得られて、異なる層に愛されたのでは、と思わずにはいられないですね。

ミスチルファンには勿論ミスチル苦手な人にも是非とも聴いてもらいたいと思ってます。

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