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邦楽アルバムベスト100

60位 The Collectors 『僕はコレクター』1987年

誰もが抱える悩みや不安、不満や希望をポップでみずみずしいバンドサウンドに乗せた傑作デビューアルバム。

時には僕らを代弁してくれたり、時には楽しませてくれたり。まるで気が置けない友達の様に寄り添ってくれるアルバム。

一見シンプルなバンドサウンドのようで自然なオーケストラアレンジやR&Bやソウルに根ざしたリズムなど、音楽的にも豊か。

このアルバムについても一本まるまる記事をかいていますので詳細はこちらからどうぞ。

59位 TOKONA-X『トウカイxテイオー』 2004年

横浜生まれ愛知県常滑市育ちの伝説的ラッパーの初ソロにしてラストアルバム。アルバムタイトルは有名な競走馬から。名古屋弁を駆使したラップは格好いいの一言。

地方に根ざしたラッパーや地方色を打ち出すラッパーは今では珍しくないですが、TOKONA-Xは元祖かつ最高峰。そしてそういった地方のラッパーでもラップ自体は標準語が多かったりするんですでけど、TOKONA-Xは終始名古屋弁でラップし続け、なおかつそれがめちゃくちゃ恰好いいんですよね。愛知県民なら一度は聴いて欲しいです。

TOKONA-Xは残念ながら本作発表後ほどなくして26歳にして亡くなってしまいます。

おすすめの曲
「Let Me Know Ya…」
トコナを知るきっかけになった曲だけどやっぱり抜群にカッコいい。この太々しさと名古屋弁の相性は抜群。TOKONA-Xのラップの凄さの一つにその発想力があるかと。「俺についてこい」とか誰でも思いつくとおもうんですけど、トコナは「先行って待っとけ」っていうんですよね。そっちの方が大物感が出るし、これは一本とられたって感じですね。
「H2」タイトル通り愛車のハマーIIについての曲。映像がビビットに浮かんでくる描写力は流石。

58位 Base Ball Bear 『バンドBについて』2006年

インディーズ音源を集めたメジャー5000枚限定企画盤のミニアルバム。ナンバーガールとスーパーカーを足して2で割って(ポップで攻撃的)、全力で青春してみたみたいな(完全に主観です)音楽性、世界観にモロ衝撃を受けました。

当時ナンバガやスーパーカーの影響を受けたバンドは沢山いましたが、これ程スマートに両バンドを消化してみせたバンドは当時なかったと思います。今聴くとそんなに共通点があるわけじゃないんですが…。編成がスーパーカーぽくて、鋭利なギターサウンドがナンバガぽかったんでしょうね。

正直それぞれの要素を因数分解していくと、当時としてはありふれたものだったんですけど、組み合わせとしてBase Ball Bearのような完成度や個性を持つバンドはいなかったんですね。当時バンドやっていた自分としてはそれだけに結構悔しかったです(笑)。やられたなと。

ところで本作、限定品ということで、もう入手は困難なんですけれども、その全貌は『完全版「バンドBについて」』でほぼつかめますし、YouTubeで公式音源を聴くことができます。

おすすめの曲
「CRAZY FOR YOUの季節」
一曲目。もうこれでガツンときましたね。二十歳そこそこで若く、メンバーは全員キャラはたってるし。演奏も決まってるし、PVは面白いし…。Base Ball Bearというのがどんなバンドか一発でインパクトをもって示すのにこれ以上の曲はないでしょう。
「ラビリンスのタイミング」イントロとかナンバガっぽいなぁと。ただ当時ナンバガに影響を受けたバンドは曲そのものはシリアスな方向に向かってたんですが、Base Ball Bearは高校生が恋や街や青春についてのピュアな気持ちを表現した歌詞で、ユーモアとポップさ、瑞々しさがあって別格でしたね。まぁユーモアとポップさってナンバガにもかなりあるんですが、そこはあんまりコピーされてなかった気も。攻撃的でノイジーなギターソロが格好いい。

57位 大滝詠一『A LONG VACATION』1981年

説明不要。こうしたランキングでは常勝、常連の一作。

作者が理想とする50年代アメリカンポップの煌びやかな世界をリゾート的イメージにのせた、日本のポップス史上の頂点に輝く大名盤にしてアルバムセールス100万枚時代の嚆矢の1枚。

アレンジでグイグイ聴かせる感じでもなく、楽曲の持つ情感を引き立たせる様な、良くも悪くも「楽曲中心」のアルバムだと思います。全編珠玉のメロディで捨て曲なしの名盤かと。

実はこのアルバムのリゾートミュージック的側面についてはもうこの記事で書いていますので、そちらもご覧ください。

56位 Number Girl『シブヤROCKTRANSFORMED状態』1999年

なぜそこまでしてナンバガのファンは彼らのライブに行きたがるのか。なぜそこまでして己のプライドをかけてチケットを取りたがるのか、俺にはよぉわからんという人に聴いてもらいたいライブ盤。

おすすめの曲
「SAMURAI」
MC終わってから歌までの破壊力たるや…。盛りあげかたがやはり上手いですね…。最初にバンド全体でのキメがあって、ギターの単体のカッティング、その後それぞれのパートが結構自由に動いてだんだん盛り上がって最高潮になったあたりで、シャウト、バンドが一丸となってフレーズを叩き込んでいく…まさに鳥肌ものです。言葉にするとなんだか間抜けですが聴けばいっていることがわかるかと。歌詞も面白いです。侍をわざわざアルファベット表記にして横文字にしている。まぁ向井さんがよく使う手なんですけど、ここではその侍のイメージをギターを主軸にしたバンドそのものと重ねているのが面白い。侍は刀、鉄の塊が武器なわけですが、バンドもギターなどの弦、つまり鉄を振動させてデカイ音を出している、その「狂った鋼の振動」を武器にするバンドを「居合いで貴様を切りつける」SAMURAIに見立てているわけです。
「日常に生きる少女」ヤヨイちゃんの謎はCDを買わないと解けない…
「OMOIDE IN MY HEAD」この曲をライブで聴いてイントロのブレイクの部分でみんなで叫ぶのが、全ナンバガファンの夢だと思うのです。お客さんもメンバーの一人という戯言はこれぐらい会場が一体化してから言って欲しいもの…。

55位 ゆらゆら帝国『ミーのカー』1999年

60年代のロックが纏っていた荒々しさやサイケな雰囲気、アートな香りを漂わせたサウンドが衝撃的な一枚。

得体のしれなさとか、オリジナリティって言う観点で見ると後期のファンは物足りなさを感じるっていうのはわかる気がしますが、やはりこのガツンとくるロックサウンドの魅力にぐっと来てしまいますね。

このアルバムに関しては全曲をこちらで紹介していますのでよろしければ是非。

54位 加藤和彦『あの頃、マリー・ローランサン』1983年

公私共にパートナーであった安井かずみの作詞と今までの人脈を駆使して作り上げた、音も詩もスタイリッシュな群像劇。

一冊の優れた短編集を読み終えた時の様な満足感が得られる一枚。

この上品さはもちろんその詩作と確かな技術を持ったミュージシャンの丁寧かつ熱のこもった演奏によって支えられてるのは確かなのですが、最も重要なエッセンスは矢張り本人の声の特徴だと思います。独特の柔らかでちょっと揺れてて鼻にかかった様な歌声は何処となく貴族性がありますね。

そういう意味では所謂「ロック」には不向きな声質で、その声の特徴については本人も自覚していたのか、ミカバントではコーラスを重ねたり、ミカが歌うことでそうした弱点を回避していた様な節がありますね。しかし本作は加藤さんの歌声に実にマッチした内容でピタリとはまった感が実に気持ちがよいです。

おすすめの曲
「あの頃、マリー・ローランサン」
お洒落というよりなんか粋と言いたい。贅沢で豊かな生活が描かれている。
「愛したのが百年目」このアルバムで1番好きな曲。言葉のセンスが爆発している。消えたガールフレンドの人物像がビビットに浮かんでくる。豪華な面子による聴きごたえたっぷりの演奏も相まって素晴らしい。曲調に不釣り合いに歪んだ高中正義のギターソロも格好良い。

53位 Blankey Jet City『BANG!』1992年

土屋昌巳と初めてタッグを組み、代表曲「冬のセーター」「ディズニーランドへ」を収録した傑作2nd。これぞブランキーという音楽性、世界観を確立した記念すべきアルバム。

おすすめの曲
「小麦色の斜面」
この曲だけ「新宿」っていう単語が出てきてもの凄い違和感でした。バンドのコンセプト自体がジェット・シティという架空の街の話を歌うというものでしたから。新宿で想像力のカプセルを飲み込んでそんな街を夢想してるって事なんでしょうが。
「ディズニーランドへ」ノイローゼになってしまった友人。その友人がディズニーランドに行きたいといっていて、歌の主人公も快諾するのですが、本当はその友人と一緒にいるのが恥ずかしいから行きたくないという歌。本来声を大にしていうべき事ではない事、隠しておきたい不都合な真実がサビで堂々と歌われます。それを赤裸々に明かして提示する曲。でもその裏には友人に対して何にもできない悲しみが感じられます。ディズニーランドは「ノイローゼになった友人」のようなものが存在しない、又は隠蔽された夢の国で、友人がそこにたどり着けないというのは象徴的。そう言った意味でも巧みな詩作だと思います。

52位 Cornelius 『Point』2001年

ひたすら気持ちの良い音を追求して作り上げられたsimpleかつ先鋭的な楽曲群が耳に心地良い名盤。ここ二三年で急にポピュラーになってきたASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)のある意味はしりですね。

コーネリアスこと小山田圭吾が自分のトレードマークと言える音楽性を発見したターニングポイントとなるアルバムだし最高傑作だと思います。

それまでのコーネリアスの音楽は音のコラージュやサンプリング的手法で理想的世界を構築していくのがメインでした。が、本作ではそのアプローチをかえて一つ一つの音の面白さやクラリティを追求し、それを組み合わせて心地よい音楽を作るという手法に変わりました。

そういう編集感覚を駆使するという意味では変わってないのかもしれませんが、結果出来上がった音楽はいままでの作品に比べるとミニマルでシンプル、しかし芳醇な世界になっています。

これ以降のコーネリアスの音楽は本作の手法を更に推し進めたり、先鋭化したものだと思うので、かなり重要な作品かと。

51位 Pizzicato Five 『女性上位時代』1991年

野宮真貴参加後の初フルアルバム。映画、音楽、ポップカルチャー。あらゆる引用をちりばめて作り上げられた小洒落てて生意気でクールなアルバム。渋谷系と聞いて自分が真っ先に連想するアルバムがこれ。

おすすめの曲
「私のすべて」
一曲目のインタビューで「なんかイラッとするな」思わせておいて、この歌詞の内容ですよ。してやられます。映画音楽っぽい演奏もクール。
「お早よう」ブレイクビーツが気持ちいい。「お早う」でもなくて「おはよう」でもなく「お早よう」なのは何故か?小津映画だろうか。
「大人になりましょう」コレはドキッとする歌詞。ロックやパンクでは、物分りのいい大人なんかなるものか、というメッセージはありふれていますが、「大人になりましょう」ってメッセージはなかなか無かったと思います。リアルタイムで聴いてた人は「やられたー」って思ったんじゃ無いでしょうか。スライ・ストーンの”Family Affair” とは、コレまた鉄板のサンプリングネタをつかっています。
「クールの誕生」タイトルはマイルスのデビュー作から拝借。タイトルから考えられた歌詞なんでしょうか。「愛してるっていえないなんて、愛して無いのと一緒」。ドキッとした男性諸君はちゃんと言おう(笑)。
「パーティー」細野晴臣のカバー。本人を引っ張り出してきて贅沢な使い方をしている笑。こういうひねくれたところが好きです。歌詞、メロディーを流石に少し変えていますが、まるでオリジナルの様にピチカートらしい曲に仕上がっているのは流石。

60位から51位まとめ アルバムランキングの限界とロンバケ順位低すぎ問題

58位 Base Ball Bear 『バンドBについて』。限定品だし、ミニアルバムだし、普通はこういうランキングには入って来ないんですが、当時衝撃を受けたのでそのドキュメントとしてランクインさせて順位づけしました。

57位 大滝詠一『A LONG VACATION』。これは順位低すぎるだろうとおもった人も多いのでは?

『風街ろまん』も『ロンバケ』も軸は「松本隆」って感じなんですよね。大滝さんのユーモラスな歌詞が好きなので『ロンバケ』はその点寂しいんです。

大滝さんの声はやっぱりどこかユーモアを内包していると思うので、その持ち味が活かし切れてない様な感じもしますし。

次作の『Each Time』は『ロンバケ』の延長線上にあって更にユーモアが後退していて、余り聴けずにいますね。

あとは「指切り」みたいな「怖い」曲、凄みを感じる曲のボーカルも本当に似合うとおもうんですよ。『ロンバケ』以降そうした曲が封印されてしまったような感じがあるので実にもったいないですね。

ゆらゆら帝国はもっと順位高くても良かったのですが、同時期のライブの音源とか聴いちゃうとスタジオ盤が物足りなく感じてしまい、順位が少し下がりました。

56位 Number Girl『シブヤROCKTRANSFORMED状態』も同じ現象がおきています。当初はもっと高い順位を想定していたのですが、いざ聴きなおしてみると、他の最高なライブ音源が頭をよぎり…、「これよりもっといいライブ音源あるな…」とか思ってしまい順位が下がってしまいました。

なので二組ともアーティストとしてはもっと好きなんですけど、この様な順位になりました。アルバムベースのランキングの限界があからさまになった2枚でしたね。

51位 Pizzicato Five 『女性上位時代』。これもこの文章書いてて順位低いなと後悔しています。アルバムの構成力もすさまじく完成されていて、今回のランキングの中でも完成度としては本当に群を抜いてるとおもうんですけど、なんででしょう。

ちょっとクールで冷静すぎるのかも知れないですね。もっと熱量が欲しかったのかも。

次回やるとしたら確実に30位以内に入れたいです。

50位 南佳孝『シルクスクリーン』1981年

デビュー作『摩天楼のヒロイン』が名盤として推される事が多いですが、僕は断然こっち派です。代表作「I want you」を筆頭に物語性の高い良質なポップスが詰め込まれた、隙がなく完成度の高い名盤。童話的でどこか柔らかなダンディズムが独特で引き込まれます。

歌謡曲にしては洗練されすぎるし、シティポップと形容するにはちょっと野暮ったさもあるんですよ。でもそれがなんか心地よくてツボなんですよね。

松本隆とのコンビというと大滝詠一ですが、南佳孝&松本隆のコンビも最高です。個人的にはロンバケと同じくらい評価されて欲しいです。また大村憲司今剛鈴木茂と、参加ギタリストも超豪華。

おすすめの曲
「スローなブギにしてくれ(I WANT YOU)」
同名映画の主題歌。イントロとかブルースっぽいエンディングとか、最後のサビ前の転調とか、ポップスの色んなクリシェを使用して作られた実に王道感のある曲。本作で一番有名な曲。
「そして…(ONE FOR JOHN)」ジョン・レノンの死について歌った曲。ジョンが暗殺されたのが80年の末のことですから、事件があってから間もないタイミングで作られたとみていいでしょう…。

49位 Chara 『Sweet』1991年

様々な表情を見せる演劇的な歌唱法とリズムを重視した曲作りが見事にハマったすんごい気持ちいいデビュー作。プリンスや岡村靖幸が好きで未聴の方は是非!隠れた名盤だと思います。

Charaの魅力はそのハスキーで可愛らしい声と、それを活かして様々な声色を聴かせる演劇的でリズミカルなボーカルかと。このアルバムではそれがポップな方向性に振り切れている感じですね。逆にいうとより複雑な音楽性を見せるもっと後アルバムのファンは物足りなさを感じるかも知れないですね。

おすすめの曲
「Rainbow Gossip」
一曲目。名詞かわりの一曲として相応しく、魅力が爆発した一曲。囁く様に歌ってみたり、声を張り上げて歌ったり、シャウトしたり、セリフを入れてみたり、様々な歌い方、表現が楽しめる一曲。コロコロと変わるその様は実にポップでスリリング。それでいてバラバラな感じは全くせずに統一感があります。この一曲で引き込まれてファンになった方も多いのでは。Sly and the Family Stoneの”Family Affair”をサンプリングしていますね。「Heaven」1stシングル。PVがYouTubeにあがってます。これは当時結構衝撃的だったんじゃないでしょうか。だんだん顔のアップになっていくシンプルなPVですけど、この構成で画に耐えうる人ってなかなかいないです。しかも新人…。最初からオーラが半端ないですね。
「Sweet」後にアルバムから2ndシングルとして発表された曲。これもPVがあるので是非見て欲しいです。Charaの魅力たっぷりの素晴らしい出来。しかしこの歌もそうですし、「Heaven」に出てくる人もそうですが、相当やんちゃな彼氏の歌が多いですね…。

48位 Syrup16g 『Free Throw』1999年

ファーストアルバム。ファーストアルバムはみんな出すからっていうのも勿論あるんですけど、このランキング、ファーストアルバム率高い気がします。

自分が抱えてるモヤモヤや問題を適切な形で代わりに表現されてるものを摂取しないとやりきれなくなる時ってないでしょうか。そういう救いがシロップにはあるし、何度も聴いてしまう理由だと思います。

おすすめの曲
「翌日」
コーラスが印象的なギターサウンドで始まる一曲目。U2みたいな爽やかなメロとサウンドなのにこの暗さはなんなのでしょう笑。歌い方やボーカルの音量低めなのもありますね。この曲に関しては何のことを歌っているのか今まであんまり考えたこと無かったのですが、解釈しようとしてもわかりそうで分からないですね…。
「明日を落としても」「こういう曲があるから逆に生きれる」みたいな事ないでしょうか。「そういう感情も持ってていいんだ」って言う肯定感が得られるからかも知れません。

47位 尾崎豊『十七歳の地図』1983年

デビュー作。対「大人」の構図を待つ10代の反抗の音楽として捉えてしまうのは実に勿体ない。本当はもっと幅広いテーマを持っているし何よりこれらの曲を十代で書き上げたというのが恐ろしいです。

プロデューサーの須藤晃、デザインの田島照久らの大人たちによる演出のお陰で、今でも割とフレッシュに聴けるというのはあると思います。

基本的にど演歌、フォーク的な泥臭さを持ってるんだけど、英語をあしらったつるんとした未来的なアートワークや音処理などのテコ入れのお陰でだいぶ古臭さが薄まっているかと。

編曲はブルース・スプリングステーンみたいなコテコテのロックアレンジなんですけど、割とクリアな泥臭さを排した80年代っぽい音処理で、80年代っぽさを内包している2010年代でも聴き易いとおもいます。

おすすめの曲
「街の風景」
1曲目。曲を作り始めたころぐらいからある曲で、本人も多分気に入っているという感じがします。尾崎豊の歌詞にはこの曲に限らず、街の風景が描かれていて、そうした都市の描写、都市の風景、暮らしのなかで人々が感じることを歌にするのが上手いなぁと。そんなわけで街を散歩しながら聴いたりすると結構ぐっとくることが多いです。是非一度そういう視点で尾崎豊の歌を味わっていただきたいですね。
「I Love You」これはもうほとんど歌詞は四畳半フォークとか演歌的世界観だと思うんですよ。英語タイトルだったりアレンジだったりでそう見えてないだけで。こういう世界観は本人がこどもの時からコピーしてたフォークソングからきていそうですね。かぐや姫の「神田川」とかそういう世界。それの84年版です。
「15の夜」色んなところでネタにされたり、尾崎=反抗する十代のシンボルみたいなレッテル付けに利用された曲。正直あんまり聴いてないですね…。仮タイトル「無免で…」「無免許」。こういうプロデュースが介する前の作品のたたずまいとかを知りたいし、音源とか聴いてみたいです。歌詞にはつっこみどころも多いんですけど、展開はドラマチックですし、やっぱり上手です。

46位 真島昌利『夏のぬけがら』1989年

ブルーハーツの活動と並行して作られたソロ一作目。パンクではなくフォークロック的な作風でファンは肩透かしをくらったかもしれません。が、詩、曲共にブルーハーツに勝るとも劣らずの1枚。あんまり人に教えずに独り占めして大事に聴きたくなるような名盤。

このアルバムの夏っぽい側面についてはこちらの記事からどうぞ。

おすすめの曲
「クレヨン」
創作についての歌と僕は解釈しました。「童心に帰って「自由」に表現しようとする事は今では何と難しい事だろう。 何にも考えずにひたすら子供がクレヨンを操るように表現できたらなぁ」という事かと。はっぴいえんどに「空いろのくれよん」という曲がありますが、それも似たようなテーマを持った曲だと思います。
「さよならビリー・ザ・キッド」誰にも憧れていた友達がいて、その友達が「普通」になって、生活にくたびれていくのを見た事があると思います。 この曲もそんな切なさをたたえた歌。今はここで歌われている「普通」が難しくなっている時代でもありますが…。「カローラに乗って」小沢健二さんの「カローラIIに乗って」と比較してみると面白いかも知れません。
「アンダルシアに憧れて」話自体は冷静に聴いたら良くあるもので、オチも大体予想できてしまうのですが、ぐいぐい引き込まれてしまう。『カリートへの道』というギャング映画がありますが、これはその音楽版ですね。

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45位 Pizzicato Five『さ・え・ら ジャポン çà et là du japon』2001年

スパークスや松崎しげる等、多彩なゲストを迎えて制作された大団円というべきラストアルバム。「日本」をテーマに、日本文化、世界で活躍する日本人、「君が代」、はっぴいえんど、ポケモンまで飛び出す一大絵巻。

おすすめの曲
「Nonstop To Tokyo」
松崎しげるをゲストに迎えた二曲目。松崎さんの歌をちゃんと聴いたのは実はコレが初めてだった…。
「君が代」お洒落なジャズっぽいアレンジで聴かせる「国家」。アルバムタイトル通り日本をテーマにしているんだけど、思いっきりジャケットには日の丸の部分に「東京」って書いてある。東京をテーマにした楽曲が彼らには沢山あって、やっぱりコアな部分に東京がある。それを今回も高らかに宣言したようなところがあります。ピチカートはある意味、東京ローカルなユニット(またはバンド)だったとおもいます。
「アメリカでは」オリジナルっぽく見えますが、実はカバー。もともとはフランキー堺主演の1964年の映画『君も出世ができる』の挿入歌。なんと作詞・谷川俊太郎、作曲・黛敏郎という豪華さです。もともとの曲も雪村いづみさんの歌唱ですが、ここでも本人に歌ってもらっています。ピチカートにはこういうカバーパターンも多いですね。本人を呼んできて採録するという。
「キモノ」スパークスをゲストにこのタイトル笑。スパークスの代表作といえばアルバム『キモノ・マイ・ハウス』。意図は明確です。ピチカートのアルバムってある程度の予備知識を必要とするというか、背景を色々知ってるとより楽しいです。
「ポケモン言えるかな」当時既に海外でも人気だったポケモンを日本を代表するものとして取り入れるセンスは流石。既に発表されていたポケモンのキャラを羅列していく歌ですが、これにピチカートが参戦。
「愛餓を」原曲は言わずと知れた、はっぴいえんどの名盤『風街ろまん』の最後の曲。最初期の日本語ロックであり、その方向づけをしたと言っても過言ではないバンドの、しかも「五十音」を「あ」から読み上げた歌詞の曲を、ブラジルの音楽であるボサノバ調、またはフレンチポップっぽいアレンジで、フランス人のクレモンティーヌに歌わせる…。その手法、見せ方など全てがピチカートを象徴している様ですね。ラストアルバムの最後の曲にこの曲をこのアレンジにとは実にピチカートらしく、これ以上ない終わり方だと思います。

44位 鈴木慶一とムーンライダーズ『火の玉ボーイ』1976年

「鈴木慶一とムーンライダーズ」名義になっていますが、実質ムーンライダーズのデビュー作。

後のニューウェーブ色全開のひねくれた、やもすればとっつきにくさもある作品よりは幾分かストレートにポップな作風。しかし、多彩な音楽性はすでに健在でして、実にさまざまなアイデアを一曲に盛り込んでくるところはやっぱりライダーズだなと思います。

鈴木慶一さんの歌唱がコレ以降のライダーズ作品よりもひねくれて無くて個人的には好み。

のちのちあからさまになっていきますが、映画好きのメンバーらしく、個々の楽曲の物語性はとても強いですね。

おすすめの曲
「あの娘のラブレター」
一曲目にふさわしいアップテンポでグッと引き込まれる楽しいナンバー。イントロが「in the mood」っぽい。曲の間奏ではアメリカの有名なラジオDJ、ウルフマン・ジャックのモノマネが入ります。これが結構似ている笑。トッド・ラングレンもウルフマン・ジャックにささげる曲を作っていたぐらいですし、やはり相当存在感のあるラジオDJだったんですね。
「スカンピン」3拍子のロマンチックなバラード。本人たちが好む所のマニアックな音楽性をキャリアを通して貫き続け、ある種売れることを拒否してきた様なムーンライダーズの姿に重なります。
「酔いどれダンスミュージック」やはり普通のバンドにはない豊かなアンサンブルが魅力ですね。個々のメンバーもそれぞれソロやCM、映画、アニメの音楽などでで活躍したりアルバムをつくったり出来る実力派揃いです。

43位 Perfume 『GAME』2008年

いまや国民的なポップアイコンといっても差し支えのないPerfumeの大ブレイク作にしてデビューアルバム。

YMO以来のテクノアーティストオリコン1位の快挙を成し遂げた作品。

お茶の間にも浸透したテクノアーティストってYMO以外で、パッと思いつくのは電気グルーヴなんですけど、最大のヒット作『A』はオリコン3位だったんですね。

このアルバムに関してはこちらで詳しく書いています。

42位 高田渡『ごあいさつ』1971年

日本のフォークに燦然と輝く名盤。日本現代詩と自作詩を伝統的なフォークソングにのせて、自身のスタイルを確立したその詩情、佇まいは2019年にこだまする様に胸を打つ。

高田さんがタカダワタル的になったアルバム。戦後から当時にかけての人々の暮らしをユーモアや皮肉を交えて伝えるドキュメントでもあります。

全編編曲は元ジャックスの早川義夫。

おすすめの曲
「ごあいさつ」
谷川俊太郎の詩に歌をつけたオープニング。日本人のまわりくどい挨拶やこそあど言葉だけで成立する奇妙な会話をユーモラスに描いた小品。鎮座DOPENESSがそのまま自身のアルバムの1曲目でカバーしていた。
「値上げ」歌詞は有馬敲(ありま たかし)の詩から。値上げに対して反発がない様に、段階的に受け入れさせていくという、いかにも日本っぽいですね…。
「コーヒーブルース」「三条へいかなくちゃ 三条堺町のイノダっていうコーヒー屋へね」。このイノダコーヒーは京都の三条にいまでもあるらしいので、ファンとしてはいつかいってみたいです。
「銭がなけりゃ」「住むなら青山にきまってるさ 銭があればね」
上京ソング。東京の生活に金がかかるのは昔から同じらしい…。
「おなじみの短い手紙」高田渡の編集感覚というか、素材をどう楽曲に調理していくかがよくわかる興味深い一曲。主人公のもとに届く1枚の手紙。それは主人公にいなくなってほしい、死を望む様な簡潔な内容だった、というような歌詞。日本人としては(とくに71年当時はもっと生々しくそうでしょう)徴兵の赤紙を連想せずにはいられない。僕もストレートにそうおもっていました。しかしこの詩は実はアメリカの詩人ラングストン・ヒューズのものなのです。原作はLITTLE OLD LETTERというタイトル。で、原作も徴兵制の詩なのかなと思うじゃないですか。実は違うんですね。”I never felt so lonesome Since I was born black.” 「これほどまでに孤独を感じたことはなかった 黒人としてうまれてきてから」という一説が原詩にはあります。つまり元の詩は人種差別の嫌がらせの手紙についての詩だったんですね。それを問題の一行を削って、「赤紙」の歌と読めるように編集したんでしょう。

41位 佐野元春『VISITORS』1984年

渡米し、ニューヨークでの生活を反映させ、それまでのブルース・スプリングスティーンばりのロックンロールから、ヒップホップの手法を取り入れ大胆な方向転換を見せた4作目。

リズムにどう言葉をのせるか、どんな言葉をのせるかによりフォーカスすることで、歌詞から詩により近づいていった作品。

おすすめの曲
「TONIGHT」
このアルバムで1番聴きやすい曲。今までの路線に1番近いポップでキャッチーなロックナンバー。最初はこの曲がアルバムのとっかかりになるが、アルバム全体に魅せられるに連れて徐々に物足りなくなってくる気も…。
「COMPLICATION SHAKEDOWN」YMOとのコラボでお馴染みのスネークマン・ショーが、1981年の彼らのアルバムの曲でもう「咲坂と桃内のごきげんいかがワン・ツゥ・スリー」というラップっぽいことは実はやってたりするのですが、一応この曲が日本で最初のラップ、ヒップポップを取り入れた曲と言うことになっていますね。ヒット曲としてチャートに出てきたことを鑑みれはたしかにそうだといえると思います。あの吉幾三さんの「俺ら東京さ行ぐだ」より半年ぐらい早いです。しかしクラッシュやブロンディーが八十年代初頭には既にラップを取り入れた曲をやっている事を鑑みれば、邦楽ロック界の反応がこれが1番最初というのは遅い気もします。キングギドラの登場以降のがちがちに韻を踏むスタイルが主流の日本のヒップホップの流れからすると、全然韻を踏んでいないように思えるこの曲が、ヒップホップかといわれても正直ピンとこないでしょうが、この当時は韻を踏むこと自体がそれほど重要視されていなかったんでしょうね。それに韻を固く踏むことだけがラップでもないですしね。
「SUNDAY MORNING BLUE」ジョン・レノンについて歌った曲。当時は暗殺から3年ちょっとでした。このアルバムはこの曲に象徴されるようにピアノやキーボードのリフで引っ張る曲が多いです。間奏部分の転調が気持ちいい。爽やかなサウンドにうっすらと憂鬱と悲しみが漂います。
「VISITORS」本作のハイライト。佐野さんの最高傑作だと思います。ヒップホップが、やりたかった訳ではなく、詩をきちんと伝えるのに便利なフォーマットだったと言う感じ。実際ポエトリーリーディングとラップと歌からそれぞれ等しい距離にあるような歌唱、曲だと思います。

50位から41位まとめ

Syrup16g 『Free Throw』。シロップはギリギリまでランキングに入ってませんでした。でも一時期めちゃくちゃ聴いたてたのに入らないのは何処かおかしいから、「入れないと」という事で、じゃあどのアルバムってことで非常に迷いましたが、自分が一番聴いてるのがこのアルバムだったので『Free Throw』を選びました。

シロップの代表作でこれをあげる人は少ないだろうし、ましてやこういうランキングにはおそらく入らなそうなアルバムなので、やはりこのランキングはパーソナルなものなんだな、と痛感させるようなセレクトでした。

47位 尾崎豊『十七歳の地図』。尾崎豊は十代に発表した3枚のうちどれにしようか結構悩みました。かといって2枚以上入れるのも何か違うと思ったので入れるなら一枚で、そのアルバムで順位をつけようと。

ですのでこのアルバムが気に入った方は他の2枚もきっと気にいると思います。

41位 佐野元春『Visitors』は初めて聴いた時全然良くない、とっつきにくいアルバムだと思いました。元春さんのそれまでのアルバムで聴ける様なポップで格好いいロックを期待していたから。

あとはヒップホップとして聴くにしても韻を踏むことを重視したものではないラップに違和感を感じ中々慣れるのに時間がかかりましたね。

でも徐々にアルバムの放つ詩やムードに魅せられ気がつけば最高傑作と思うまでに…。

40位から31位に続きます。

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