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最悪な創作環境→4,000万枚売れるアルバムできた。何故? フリートウッド・マック『噂』

2019/01/10
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2組のバンド内カップルの内、離婚が1組、もう片方は破局。

リーダーは奥さんを寝取られて離婚。

前作がいきなり大ヒットしてプレッシャーからか、メンバーは酒とクスリに溺れる日々。

今日はそんな最悪な状況のなか生まれた、フリートウッド・マック(Fleetwood Mac)の大傑作、大ヒットアルバム『噂(うわさ)』(原題:Rumours)をご紹介します。



変化し続けるバンド、フリートウッド・マック

フリートウッド・マックは総売り上げ枚数1億枚を超えるバンドです。イギリスで1967年に結成され、その活動拠点をアメリカに移していきました。

さて、早速『噂』について解説していきたいのですが、その前にフリートウッド・マックとはどんなバンドで、どのような遍歴を経てきたのか説明していきたいとおもいます。

実はデビューしたころと、『噂』を発表したころとはメンバーが違っており、ぜんぜん違うバンドになってます。

最初はブルースロックバンドだった。

フリートウッド・マックというバンド名はドラムのミック・フリートウッド(Mick Fleetwood、ベースのジョン・マクヴィー(John McVie)からとられました。

が、最初はピーター・グリーン(Peter Green)というギタリストがバンドの中心になっていました。初期の彼らはブルースを基盤としたいわゆるブルース・ロックバンドでした。

当時のヒット曲は全英1位を記録したインスト曲「アルバトロス」(Albatross)。後にサンタナがカバーしたことでさらに有名になった「ブラック・マジック・ウーマン」(Black Magic Woman)。


「アルバトロス」はあほうどりのことです。短いインスト曲なんですけど静かで美しい曲です。

しかしバンドは順調だったものの、肝心のピーター・グリーンがドラックにはまり、体調が悪化したこともあり1970年に脱退。

その後もジョン・マクヴィーと結婚していたクリスティーン・マクヴィー(Christine McVie)を迎えたり、メンバーチェンジや補充を続けながらバンドは存続、活動の拠点をアメリカに移します。

強力なフォークデュオの加入。

転機が訪れたのは1974年、フォークデュオ、リンジー・バッキンガム(Lindsey Buckingham)のスティーヴィー・ニックス(Stevie Nicks)の『バッキンガム・ニックス』(Buckingham Nicks)を気に入ったメンバーは、リンジーにバンドへの加入を持ちかけます。

彼はバンドに参加する条件として、ガールフレンドであり、ビジネスパートナーだったスティーヴィー・ニックスと一緒であることを提示し、バンドもそれを受け入れました。

こうして2人のシンガー(リンジーとスティーヴィー)、3人のソングライター(リンジー、スティーヴィー、クリスティーン・マクヴィー)を要する新生フリートウッド・マックになり、曲もよりポップで、フォークロック的なものになったのです。

いきなり大成功

このメンバーで初めて発表されたセルフ・タイトルアルバム『ファンタスティック・マック』(原題:Fleetwood Mac)は全米1位を獲得し、500万枚を売り上げ、「オーヴァー・マイ・ヘッド」(Over My Head)「リアノン」(Rhiannon)「セイ・ユー・ラヴ・ミー」(Say You Love Me)というヒットを生みました。


余談ですが「リアノン」は日本のラッパー般若のデビューアルバム、『おはよう日本』の「タイムトライアル」という曲でサンプリングされています。

というわけで新生フリートウッド・マックはいきなり大成功を収めました。そしてその次に発表されるのがいよいよ『噂(うわさ)』(原題:Rumours)になります。

『噂(うわさ)』


『噂』は1974年に発表された、彼らにとって11枚目のスタジオアルバムになります。

収録曲は全11曲。

「ドリームス」(Dreams)、「オウン・ウェイ 」(Go Your Own Way) 、「ドント・ストップ」(Don’t Stop) 、「ユー・メイク・ラヴィング・ファン」(You Make Loving Fun)がシングルとして発表されました。

最終的には全世界で4,000万枚を売り上げ、史上最も売り上げたアルバムのひとつに数えられています。

アルバムの背景となる人間関係

それでは早速アルバムの内容を見ていきたいのですが、その前にアルバムの背景となる人間関係を整理したいと思います。
このときのメンバーは5人。

リンジー・バッキンガム(ギター、ボーカル、作詞作曲)
スティーヴィー・ニックス(ボーカル、作詞作曲)

クリスティーン・マクヴィー(キーボード、ボーカル、作詞作曲)
ジョン・マクヴィー(ベース)

ミック・フリートウッド(ドラム)

で、リンジーとスティーヴィーがカップル、クリスティーンとジョンが夫婦だったのですが、前作の『ファンタスティック・マック』の後のツアー後に離婚。

リンジーとスティーヴィーも別れたり、くっついたりを繰り返すなど関係は悪化していました。

更にドラムのミックも、親友に奥さんを寝取られて離婚するなど、メンバーの私生活はボロボロ。

また報道ではあることないことを書き立てられ、本作のレコーディングには薬物が蔓延し、深夜に及ぶパーティ三昧の後、やっとレコーディングに入るなど、まさに環境としては最悪のものでした。

それでもバンド史上最大のヒット作が生まれてしまったのです。



曲紹介

『噂』に入っている曲は上記のような状況を反映して書かれた内容になっています。それでは実際に何曲か紹介していきましょう。

  • 「セカンド・ハンド・ニュース」(Second Hand News)

ギターのリンジーによるアルバム一発目の曲。

軽快なテンポで明るい曲調なのですが、それに反して内容は自分の恋人の心変わりでやけになっている歌。

僕は本作で一番すきな曲です。

  • 「ドリームス」(Dreams)

スティーヴィー・ニックス作の全米1位のヒットシングル曲。おそらく本作で最も有名な曲なのではないでしょうか。

ニックスによるとドラムのパターンを思いついてから10分で書き上げたとのこと。

3つしかコードを使っていないいたってシンプルな曲。

最初はシンプルすぎてメンバーもレコーディングには乗り気ではなかったらしいが、ニックスの説得とメンバーの創意工夫によって全米No.1シングルが完成してしまった。

要約すると「私を失ったらあなたは後悔するでしょう」っていう歌なんだけれど、表現がおもしろい。

  • 「ドント・ストップ」(Don’t Stop)

クリスティン・マクヴィーのペンによる、本作で唯一前向きな曲。

振り返らずに明日のことを考えようというシンプルなメッセージ。

  • 「オウン・ウェイ 」(Go Your Own Way)

リンジー・バッキンガム作曲によるシングル曲。

さびはもうひたすら「Go Your Own Way」と歌っていて、昔僕はこれを「君は自分の信じた道をすすめばいい」てきな前向きな感じでとらえていたんですが、
背景を知って歌詞をきちんと読むと「どこにでもいっちまえ」と解釈できるんですね。

ヴァース(Aメロ)部分では、戸惑いつつも、まだ恋人としての関係性を保とうとしている感じでだんだん盛り上がっていって、コーラス(サビ)部分では「もういっちゃえよ」ってなっています。

  • 「ザ・チェイン」 (The Chain)

本作で唯一メンバー全員で作られた曲。

F1好きの方にはイギリス国営放送BBCの『GRAND PRIX』のテーマソングとておなじみの曲。

つい最近では映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol.2』でもストーリーにあわせて効果的に使われていました。

絆や愛情がもたらす束縛についての歌。

まとめ ヒットの理由、および名盤誕生の背景

結局前述のようなゴタゴタにもかかわらずバンドは存続し、その後も本作以上の成功はもちろんなかったものの、1987年までのこのメンバーで活動を続けました。

本作はセールス的な成功のみならず、後世へも多大な影響を及ぼし、数々のカバー曲も生んで、本作だけのトリビュートアルバムも発表されています。

なぜ名盤たりえたのか

メンバーもいっていますがこのアルバムの勝因は、どろどろの状況の中でレコーディングに打ち込むことでそれぞれが自分を保っていたこでしょう。

あとはそれぞれが歌いたい想い、抱えているものがあって、それをストレートに曲に反映できたということでしょうか。

歌いたいことがある。

これは強力なモチベーションになりますし、リスナーに伝わってくることも多いです。

また人間関係で悩んでいない人なんてほとんどいないので大きな共感も得られます。

ソングライターとシンガーが3人もいたことで曲のバリエーションと視点の多様性が確保できたということも有利に働いています。

バリエーション、多様性を持ちつつバンドとしては演奏面では一体化していた、ので散漫な印象もありません。

もちろんそれぞれの楽器の演奏上の特徴、癖もありますが、その一体感の鍵はコーラスワークだと思います。

このメンバーにしか出せない声のハーモニー、それがそれぞれの曲で聞けるのです。

とくに「ザ・チェイン」ではそれが顕著です。

単なるポピュラーミュージックを超えたアルバム

2004年のリマスター盤のライナノーツに書いてあるんですが、このアルバムはもう当時のアメリカ人にとってひとつの文化的な現象だったんですね。

みんながこのアルバムの全曲をどこかで聴いたことがる。もうそんな感じなんですよ。

それからこのアルバムの後にはしばらく噂をRumorではなくRumourとつづる現象が起きていたみたいですね。Rumourはイギリス英語でして、かれらはもともと英国出身なんで、そんなつづりなんですね。



おわりに

いかがだったでしょうか。

単なる音楽アルバムを超えたひとつの文化現象ともいえるヒット作だったんですね。

僕は中学生ぐらいの時に「そんなに売り上げたんならさぞかしすごいアルバムなんだろう」ということで売り文句につられて買ったのですが、正直その時の耳には地味なアルバムに聴こえました。

しかしじわじわと好きになってきて、気づいたら大好きなアルバムのひとつになっていました。

最低な状況で生み出された最高のメガヒットアルバム。

聴いてみてはいかがでしょうか。

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