フリートウッド・マック最高傑作『噂』。累計4,000万枚売れたモンスターアルバム。

今回はフリートウッド・マック(Fleetwood Mac)の大傑作で、4000万枚以上を売り上げている大ヒットアルバム『噂(うわさ)』(原題:Rumours)をご紹介します。

2組のバンド内カップルの内、離婚が1組、もう片方は破局。

リーダーは奥さんを寝取られて離婚。

前作がいきなり大ヒットしてプレッシャーからか、メンバーは酒とクスリに溺れる日々。

と、なにかクリエイティブなことに取り組むには最悪の環境だったんですね。

おまけにできたアルバムはめちゃくちゃ暗い内容だったんです。

一体どうしてそんなにヒットしたのでしょうか。

早速その背景と詳しい内容をみてみたいと思います。

I. 変化し続けるバンド、フリートウッド・マック

さて、早速『噂』について解説していきたいのですが、その前にフリートウッド・マックとはどんなバンドで、どのような遍歴を経てきたのか説明していきたいとおもいます。

フリートウッド・マックは総売り上げ枚数1億枚を超えるバンドです。イギリスで1967年に結成され、その活動拠点をアメリカに移していきました。

実はデビューしたころと、『噂』を発表したころとはメンバーが違っており、ぜんぜん違うバンドになってます。

1. 最初はブルースロックバンドだった。

フリートウッド・マックというバンド名はドラムのミック・フリートウッド(Mick Fleetwood、ベースのジョン・マクヴィー(John McVie)からとられました。

が、最初はピーター・グリーン(Peter Green)というギタリストがバンドの中心になっていました。初期の彼らはブルースを基盤としたいわゆるブルース・ロックバンドでした。

当時のヒット曲は全英1位を記録したインスト曲「アルバトロス」(Albatross)。後にサンタナがカバーしたことでさらに有名になった「ブラック・マジック・ウーマン」(Black Magic Woman)

しかしバンドは順調だったものの、肝心のピーター・グリーンがドラックにはまり、体調が悪化したこともあり1970年に脱退。

その後もジョン・マクヴィーと結婚していたクリスティン・マクヴィー(Christine McVie)を迎えたり、メンバーチェンジや補充を続けながらバンドは存続、活動の拠点をアメリカに移します。

2. 強力なフォークデュオの加入。

転機が訪れたのは1974年、フォークデュオ、リンジー・バッキンガム(Lindsey Buckingham)とスティーヴィー・ニックス(Stevie Nicks)の『バッキンガム・ニックス』(Buckingham Nicks)を気に入ったメンバーは、リンジーにバンドへの加入を持ちかけます。

彼はバンドに参加する条件として、ガールフレンドであり、ビジネスパートナーだったスティーヴィー・ニックスと一緒であることを提示し、バンドもそれを受け入れました。

こうして2人のシンガー(リンジーとスティーヴィー)、3人のソングライター(リンジー、スティーヴィー、クリスティン・マクヴィー)を要する新生フリートウッド・マックになり、曲もよりポップで、フォークロック的なものになったのです。

3. いきなり大成功

このメンバーで初めて発表されたセルフ・タイトルアルバム『ファンタスティック・マック』(原題:Fleetwood Mac)は全米1位を獲得し、500万枚を売り上げ、「オーヴァー・マイ・ヘッド」(Over My Head)「リアノン」(Rhiannon)「セイ・ユー・ラヴ・ミー」(Say You Love Me)というヒットを生みました。

余談ですが「リアノン」は日本のラッパー般若のデビューアルバム、『おはよう日本』の「タイムトライアル」という曲でサンプリングされています。

というわけで新生フリートウッド・マックはいきなり大成功を収めました。そしてその次に発表されるのがいよいよ『噂(うわさ)』(原題:Rumours)になります。

II.『噂(うわさ)』


『噂』は1974年に発表された、彼らにとって11枚目のスタジオアルバムになります。

収録曲は全11曲。

「ドリームス」(Dreams)、「オウン・ウェイ 」(Go Your Own Way) 、「ドント・ストップ」(Don’t Stop) 、「ユー・メイク・ラヴィング・ファン」(You Make Loving Fun)がシングルとして発表されました。

最終的には全世界で4,000万枚を売り上げ、史上最も売り上げたアルバムのひとつに数えられています。

アルバムの背景となる人間関係

それでは早速アルバムの内容を見ていきたいのですが、その前にアルバムの背景となる人間関係を整理したいと思います。
このときのメンバーは5人。

リンジー・バッキンガム(ギター、ボーカル、作詞作曲)
スティーヴィー・ニックス(ボーカル、作詞作曲)

クリスティン・マクヴィー(キーボード、ボーカル、作詞作曲)
ジョン・マクヴィー(ベース)

ミック・フリートウッド(ドラム)

で、リンジーとスティーヴィーがカップル、クリスティンとジョンが夫婦だったのですが、前作の『ファンタスティック・マック』の後のツアー後に離婚。

リンジーとスティーヴィーも別れたり、くっついたりを繰り返すなど関係は悪化していました。

更にドラムのミックも、親友に奥さんを寝取られて離婚するなど、メンバーの私生活はボロボロ。

また報道ではあることないことを書き立てられ、本作のレコーディングには薬物が蔓延し、深夜に及ぶパーティ三昧の後、やっとレコーディングに入るなど、まさに環境としては最悪のものでした。

それでもバンド史上最大のヒット作が生まれてしまったのです。

『噂』に入っている曲は上記のような状況を反映して書かれた内容になっています。

III. 曲紹介

1. セカンド・ハンド・ニュース “Second Hand News”

ギターのリンジーによるアルバム一発目の曲。

軽快なテンポで明るい曲調なのですが、それに反して内容は自分の恋人の心変わりでやけになっている歌。

僕は本作で一番すきな曲です。

2. ドリームス “Dreams”

スティーヴィー・ニックス作の全米1位のヒットシングル曲。

おそらく本作で最も有名な曲なのではないでしょうか。

ニックスによるとドラムのパターンを思いついてから10分で書き上げたとのこと。

ドラムのパターンが最初に出来たというのは、納得ですね。

コードも3つしか使っていないいたってシンプルな曲なんですけど、その分ドラムとベースのリズム隊の生み出すグルーヴの心地よさでずっと飽きずにきかせています。

それ以外のギターやエレクトリックピアノは、タイトルが示すように夢のようなぼやけた音像で、全体を包み込むように曲を装飾しています。

最初はシンプルすぎてメンバーもレコーディングには乗り気ではなかったらしいが、ニックスの説得とメンバーの創意工夫によって全米No.1シングルが完成してしまった。

要約すると「私を失ったらあなたは後悔するでしょう」っていう歌なんだけれど、表現がおもしろいです。

3. ネヴァー・ゴーイング・バック・アゲイン “Never Going Back Again”

リンジーのアコースティックギターの重ねどりとボーカルのみのシンプルな楽曲。

コレも愛の終わりと再生を繰り返す話になっていて何となくスティーヴィとの関係を想起させる。

なんだかんだで結構聴いてしまう爽やかなフォークソング。

4. ドント・ストップ “Don’t Stop”

クリスティン・マクヴィーのペンによる、本作で唯一前向きな曲。

振り返らずに明日のことを考えようというシンプルなメッセージ。

5. オウン・ウェイ “Go Your Own Way”

リンジー・バッキンガム作曲によるシングル曲。

さびはもうひたすら「Go Your Own Way」と歌っていて、昔僕はこれを「君は自分の信じた道をすすめばいい」てきな前向きな感じでとらえていたんですが、
背景を知って歌詞をきちんと読むと「どこにでもいっちまえ」と解釈できるんですね。

ヴァース(Aメロ)部分では、戸惑いつつも、まだ恋人としての関係性を保とうとしている感じでだんだん盛り上がっていって、コーラス(サビ)部分では「もういっちゃえよ」ってなっています。

6. ソングバード ”Songbird”

クリスティン・マクヴィーによる美しいバラード。

彼女の歌とピアノ、そしてリンジーのギターのみのシンプルな曲。

7. ザ・チェイン “The Chain”

本作で唯一メンバー全員で作られた曲。

F1好きの方にはイギリス国営放送BBCの『GRAND PRIX』のテーマソングとておなじみの曲。

つい最近では映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol.2』でもストーリーにあわせて効果的に使われていました。

絆や愛情がもたらす束縛についての歌。

8. ユー・メイク・ラヴィング・ファン “You Make Loving Fun”

同じくクリスティンのペンによるクラヴィネットやオルガンのヘビーなサウンドが重厚な雰囲気を醸し出すロックナンバー。

リンジーの悲痛さを感じるギターソロやオブリが聴きどころ。

9. アイ・ドント・ウォント・トゥー・ノウ ”I Don’t Want to Know”

スティーヴィー・ニックスによるアップテンポなポップソング。

リンジーのコーラスがスティーヴィーと息ぴったりでなんだかんだでいいコンビですね。

スティーヴィーお気に入りの曲がボツになってコレが入ったので曰く付きの曲。

楽しげな曲調だが中身は辛辣です。

そんなんばっかこのアルバム…。

10. オー・ダディ Oh Daddy

クリスティン作曲で、ボーカルも彼女。

ハーモニクス奏法を生かしたリンジーのアコースティックギターの演奏がいいですね。

11. ゴールド・ダスト・ウーマン “Gold Dust Woman”

アルバムのラストナンバーでスティーヴィー作曲、ボーカル。

タイトルのゴールドダストとはコカインのことで、レコーディング期間の退廃した自分達の生活をうたった曲ですね。

曲の最後のほうで、まるで獣のようで悲痛な咆哮が鳴り響き暗い雰囲気でアルバムは幕を閉じます。

IV. まとめ ヒットの理由、および名盤誕生の背景

結局前述のようなゴタゴタにもかかわらずバンドは存続し、その後も本作以上の成功はもちろんなかったものの、1987年までのこのメンバーで活動を続けました。

本作はセールス的な成功のみならず、後世へも多大な影響を及ぼし、数々のカバー曲も生んで、本作だけのトリビュートアルバムも発表されています。

1. なぜ名盤たりえたのか

メンバーもいっていますがこのアルバムの勝因は、どろどろの状況の中でレコーディングに打ち込むことでそれぞれが自分を保っていたことでしょう。

あとはそれぞれが歌いたい想い、抱えているものがあって、それをストレートに曲に反映できたということでしょうか。

歌いたいことがある。

これは強力なモチベーションになりますし、リスナーに伝わってくることも多いです。

また人間関係で悩んでいない人なんてほとんどいないので大きな共感も得られます。

ソングライターとシンガーが3人もいたことで曲のバリエーションと視点の多様性が確保できたということも有利に働いています。

バリエーション、多様性を持ちつつバンドとしては演奏面では一体化していた、ので散漫な印象もありません。

もちろんそれぞれの楽器の演奏上の特徴、癖もありますが、その一体感の鍵はコーラスワークだと思います。

このメンバーにしか出せない声のハーモニーがそれぞれの曲で聞けるのです。

とくに「ザ・チェイン」ではそれが顕著です。

2. 単なるポピュラーミュージックを超えたアルバム

2004年のリマスター盤のライナノーツに書いてあるんですが、このアルバムはもう当時のアメリカ人にとってひとつの文化的な現象だったんですね。

その時代を生きたみんなが、このアルバムの全曲をどこかで聴いたことがある。

もうそんな感じなんですよ。

それからこのアルバムの後にはしばらく噂をRumorではなくRumourとつづる現象が起きていたみたいですね。Rumourはイギリス英語でして、かれらはもともと英国出身なんで、そんなつづりなんですね。

3. おわりに

いかがだったでしょうか。

単なる音楽アルバムを超えたひとつの文化現象ともいえるヒット作だったんですね。

僕は中学生ぐらいの時に「そんなに売り上げたんならさぞかしすごいアルバムなんだろう」ということで売り文句につられて買ったのですが、正直その時の耳には地味なアルバムに聴こえました。

しかしじわじわと好きになってきて、気づいたら大好きなアルバムのひとつになっていました。

最低な状況で生み出された最高のメガヒットアルバム。

聴いてみてはいかがでしょうか。

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