1. 衝撃的なニュース
2000年代初頭、元ライド (Ride) のギタリスト、アンディ・ベルがオアシス (Oasis) に加入すると聞いたとき、とても興奮したのを覚えています。
オアシスのロックスター然としたふてぶてしさと、超王道のキャッチーなロック。
きらびやかで美しく、幻想的なライドのポップネス。
この2つが理想的に融合したスーパーバンドが誕生するという期待があったからでした。
オアシスとライドの組み合わせは悪くないどころか最高の部類だと思います。
どちらも初期は轟音ギターサウンドにポップな曲の組み合わせで売っていたバンドだからです。
ただバンドとしてのたたずまいは全然違っています。
古くからの工業地帯であるマンチェスター出身のオアシスは、いかにも労働者階級出身バンドらしい荒々しさと、ビックマウスっぷりで人気を博していました。
一方でオックスフォード出身のライドはその逆で実に爽やかでもっと知的な印象でした。
2. アンディに期待していたもの
ライドの中心人物でメインのソングライターの一人だったアンディ・ベル。
そのアンディがオアシスに加入すると聞いて、オアシスの音楽、またはバンドとしてのあり方に、どのような変化が生ずるか非常に興味がそそられたのです。
つまり、
①アンディのポップセンスあふれる楽曲を書く才能→オアシスの楽曲の質、バラエティー性の強化、場合によってはオアシスの作曲を一人で担っていたノエルとの共作。
②ライドの特長的なキラキラとしたギターサウンド→オアシスの楽曲にあのギターの音が入る。
上記の効果を期待していたわけです。
ところがアンディがオアシスに加入するそのパートはベースだと聞いたときに嫌な予感がしました。
「なぜベース??」
アンディはライドではギターを担当していて、それがライドのサウンドの要になっていたのです。
3.『ヒーザン・ケミストリー』
嫌な予感は的中しました。
アンディが初参加したアルバム、『ヒーザン・ケミストリー』はオアシスとライドを足して2で割ったような夢のサウンドではなかったのです。
考えてみたら上記の期待はライド後期の音楽性やオアシス自体のサウンドの変化を完全に無視していたものでした。
なので期待ハズレは当然といえば当然だったかもしれません。
ひとつ誤解してほしくないのは、個人的にはそのアルバム自体は結構好きでした。
期待していたアンディとノエルの共作曲はもちろんなかったし、そもそもアンディが提供した曲はインストルメンタル1曲だけでした。
しかし、ボーカルのリアム・ギャラガーが作曲した曲が増え、それもシングルカットされるほどのいい曲(Songbird)であり、アンディと同じく強化要員として加入した、ゲム・アーチャーも1曲提供するなど、①で期待していた複数のソングライター体制と楽曲のバラエティー性の強化は図らずとも別の形で成し遂げられたのです。
しかし、こちらが期待したオアシスでなかったことは事実です。
その後のオアシスの活動についても、アルバムを出すたびに、アンディがライドでやっていたようなサウンドをオアシスでやる事を期待しました。
が、その期待は当然裏切られ続けました。
4. オアシス解散、ビーディ・アイへ
そしてついにオアシスは2009年に解散。
解散後にメンバーの大半はビーディ・アイ (Beady Eye)を結成し、アンディはついにギターのポジションになります。
が、ビーディ・アイのサウンドはライドとはかけ離れ、どちらかというと解散直前のオアシスのサウンドに近しいものでした。
というわけで残念ながらアンディ・ベルがオアシスに加入すると聞いたときに思い浮かべた、あの理想のバンドサウンドはついに実現はしませんでした。
が、その時のワクワクについては未だによく覚えているし、とても代えがたい経験だったとおもいます。
オアシスのカリスマ的なバンドの存在感とロックサウンド。
きらびやかで美しく、幻想的なライドのポップさ。
考えてみたら、それらが理想的に融合したスーパーバンドって、ストーン・ローゼズそのものではないでしょうか。
もしかしたら、その時不在であったストーン・ローゼズの再来を無意識に夢見ていたのかもしれません。