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80年代の「優しさ」をパックした、高野寛のソロデビュー作『hullo hulloa』(ハローハロア)

2019/06/11
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一度も聴いたことのないはずなのになぜだか懐かしい、子供のころを思い出させるような曲、アルバムってないでしょうか。

筆者にとっては今回紹介するアルバムがまさにそれに当たります。

今日は80年代後半にあったある種の暖かな空気感、雰囲気を感じさせる、高野寛(たかの ひろし)の1988年に発表されたデビューアルバム、『hullo hulloa』(ハローハロア)をとりあげたいと思います。



高野寛ってどんなひと?

高野寛は1964年生まれのミュージシャン・音楽プロデューサーです。

トッド・ラングレン、ビートルズ、YMOに影響を受けており、代表曲はオリコン2位を記録した「虹の都へ」や「ベステンダンク」など。

近年ではYMOのサポート(HASYMO)、元THE BOOMの宮沢和史を中心とするGANGA ZUMBA、高橋幸宏の呼びかけにより結成されたpupaなどにギタリストとして参加。

YouTubeやnoteにチャンネルをもち、自らの楽曲のストリーミングサービスへのアクセスも充実させているなど、この世代のミュージシャンにしては積極的に新しいメディアを取り入います。

今なお精力的に幅広く活動を続けているアーティストです。

『hullo hulloa』(ハローハロア)とは


hullo hulloa

『hullo hulloa』(ハローハロア)は1988年に発表された、高野寛のデビューアルバムになります。

プロデューサーは元YMOの高橋幸宏。

実は高野寛のデビューのきっかけは高橋幸宏とムーライダースの鈴木慶一が主催していたオーディション「究極のバンド」に合格したからでした。

それをきっかけにその二人のバンド、ビートニクスのツアーにギタリストとして参加、そのまま高橋幸宏によるプロデュースのシングル「See You Again」でデビューしたのです。それに続くデビューアルバムがこの『hullo hulloa』です。

前述したように、彼の代表作はオリコン2位を記録した「虹の都へ」や3位の「ベステンダンク」とされています。

それ故に上記ヒットシングルを収録した3rdアルバムの『CUE』、四枚目の『AWAKENING』が高野寛の代表作としてとりあげられることが多いです。

特に『CUE』は、彼が長年のファン出会ったトッド・ラングレンプロデュースと、何かと話題も多く、それに比べると『hullo hulloa』、地味な扱いをされています。

が、内容は負けず劣らずですので聴かれないのは非常にもったいない。

『hullo hulloa』(ハローハロア)のここが凄い

とにかくデビュー作とは思えない完成度の高さと落ち着きなんですよね。

普通デビュー作といえばなんらかの気負いや焦りのようなものが感じられるものですが(それがよかったりもするのですが)、そういったものを感じさせない余裕があります。

かといって全く手を抜いているという印象はなく、一曲一曲丁寧にしあげている印象があり、その結果、デビューアルバムなのにほぼ捨て曲なしです。

まるで3枚目、4枚目のアルバムの様に聞こえます。

この落ち着きはもしかしたら、鈴木慶一と高橋幸宏という大御所二人とすでにツアーで回っているという経験からきている余裕だったのかもしれません。

そういった完成度の高さ、ポップスとしての水準の高さはもちろんこのアルバムの圧倒的な強みなんですけれども、強調しておきたい要素が他に一つあります。

サウンドです。

80年代のサウンド

人によって捉え方は様々だとおもうんですけど、80年代を代表するサウンドって、よく引き合いに出されるようなキラキラとして、ポップで、ある意味無機質で機械的でサウンドだとおもうんです。

また80年代後半はやはり日本にはバブリーな雰囲気があったとおもうのですが、そういう現象とか喧騒の裏に、そういったこととは無縁の生活や、静けさや暖かみがあったとおもうのです。

僕が育った地方都市なんかでは特に。

この『hullo hulloa』はそんな時代のバブリーな喧騒の裏で、ひっそりとそんざいしていた「暖かみ」を、上手く汲み取って的確に鳴らしてしまったような響きがあるのです。

なぜなのか。

総合スーパー

平成初期、当時は今みたいなモールなんて物はまだ一般的でなく、2階から6階ぐらいの建物で、一階に食料品があって、五階にゲームセンター、レストラン、四階にオモチャ屋、本屋、寝具と電気屋、三階紳士服、二階婦人服といった、いわゆる総合スーパーが主流でした。

そう、ダイエーが得意としていたスタイルです。

それは今のモールより小規模でもっと落ち着いたものでした。

そして、いまではイオン、旧ジャスコなどの郊外型モールの台頭で、少なくなってしまったそんなショッピングセンターで、当時うっすらとかかっていたようなBGMは「生活の暖かみ」のイデアのようなたたずまいがありました。

いまのモールのようなショッピングセンターではそれぞれの店で完全に違うBGMが流れていますが、昔の総合スーパーでは統一された音楽が流れていたのです。

食料品だけを取り扱っているスーパーではもうちょっとアグレッシブなオリジナル曲とヒット曲のクラシックアレンジのミックスがかかっていると思うのですが、昔の総合スーパーではテーマソングはすべての売り場で流れます。

ですから心地よく買い物できるような、「生活の暖かみ」を感じさせる曲が必要でしたし、そういった店舗オリジナル曲がかかっていたのです。

『hullo hulloa』の楽曲群はそういった音楽を想起させるのです。

このアルバムにで出会ったのはもう大分大人になってからでしたが、そのサウンドのせいですごく懐かく、どこかで聴いていたような、ずっと探していた音のような感じがしてなりませんでした。

しかし本人はその初期の音の処理が気にくわなかったのでしょうか。

4年後の1992年に発売されたベストアルバム、『Timeless Piece』では『hullo hulloa』に収録されたいた三曲はすべてNew Versionとしてリミックス、再録されており、ボーカルにかかっていた靄のようなエフェクトが取り除かれ、より生っぽいクリアなボーカルになっています。

それは確かに90年代にアップデートされた音でした。

しかし、『hullo hulloa』にあった、うまく言えませんが、「ある種の永遠性」は失われてしまった気がします。

全曲オススメなのですが、ここでは5曲に絞って触れていきたいとおもいます。



オススメ必聴五曲!

  • 「See You Again」

アルバム最初の曲。

君も僕もお互いのものじゃない

ここで描かれているある意味さっぱりとして情熱を欠いたクールな恋愛は、とても今っぽいなって思えます。

もう2年も君を笑わせてきた僕

通常のポップスで描かれる時間よりもより長い時間軸の話なのも興味深いです。

  • 「二人のくぼみ」

2曲目。恋人同士の二人に初めて溝ができてしまった話。

それはどうやら「僕」の言葉によって引き起こされたもののようで、それはまた「僕」の「今までで一番素敵な言葉」で解決されようとしている。

が具体的にそれがなにであるかはわからなくなっています。

対する彼女の反応は電話の比喩で表現されています。

  • 「恋愛感情保存の法則」

3曲目です。1曲目からここまでは恋愛の歌が続きます。

半年前に別れた恋人から電話があって再開する話。「でも何でもないさ 今のこの気持ち」とうたっている。

普通この手の曲ではもっと強がっている感じがあるのですが、あまり強がっているように聞こえません。

本当に何でもないように聞こえて、その距離感がおもしろい。

最後に「もう何でもないさ 今のこの気持ち もう知らないよ」といいつつ、「でもこの気持ち」と余韻をのこし、少しつよがりをみせます。

  • 「宝島まで」

個人的にベストトラックの一つ。

この曲の歌前のイントロのシンセがなんとなく、総合スーパーっぽいのです。

といっても決して安っぽいサウンドではありません。歌われているようにわくわくしてタノシクなる曲です。

  • 「国境の旅人」

ベストアルバムにも入っている曲。

さまざまな国のイメージが出てくるが、場所は特定されない(「ギリシャのように乾いたフランス?」「インドのように暑いチベット?」「ロシアのように寒い日本?」)。

そういえばアルバムタイトル、ジャケットやインナースリーブのデザイン含め、なんとなく無国籍的な雰囲気があります。

ジャケットで本人が手にしているギターも14弦のクラシックギターに見えますが、非常に珍しいものです。



まとめ

今回紹介したのは5曲のみですが、ほかにもベストアルバムにも収録されている人気曲、「夜の海を走って月を見た」、前編英語詩の「September Dream」など聴き所は沢山あります。

その原点というにはあまりに完成し、落ち着いているデビュー作、ためしに聴いてみてはいかがでしょうか。

是非その「暖か」で優しい手触りのサウンドを感じていただきたいです。

ちなみにhullo hulloa(ハロー ハロア)というのは、両方ともおーい!とかやぁ!とかいうような呼びかけの言葉です。

なんとなく英語っぽくないと思っていたが英語でした。

これも無国籍風ですね。

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Comment

  1. カスタードまんじゅう より:

    曲は分からないのですが…タイトルがどれも印象的ですね。

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