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FM情報誌『FM fan』の思い出

FM Fan。1966年に創刊され、2001年12月10日号にて休刊した雑誌です。

出版は共同通信社からで、その名のとおり、FMラジオの番組表を中心とした音楽雑誌でした。

取り扱う内容は幅広く、ロック、ポップスだけでなく、ジャズやクラシック、オーディオの記事まで、その内容はかなり幅広かったです。

よく言えばオールマイティな雑誌ですが、悪く言えばどの層にとっても中途半端な内容の雑誌といってよかったでしょう。

それがたぶん休刊の一因ではあるとおもいます。

当時中学生だった僕からすると、正直「クラシックの記事、…いらないな」とか「オーディオか、いいのはよくわかった。けど買えない…」とかおもったものでした。

「長岡鉄男のDynamicTest」が人気だったということも当時まったく知らなかったのです。




出会い

そんな雑誌をなぜ買い始めたのかというと、NHK FMの番組表があったからでした。

iTunesSpotifyなどのサブスクリプションサービスはもちろん、YouTubeすらなかった当時、聴きたい音楽があったら、レンタルするか買うかするしかなかったのです。

限られた中学生のおこずかいの中から3,000円、安くても2,000円ぐらいするCDを買うのも大変でした。

田舎でしたから中古の品揃えも悪いし、もちろんメルカリなんてものは存在しません。

レンタルするにもカードを作れないから親と一緒でないと無理、などの悪条件のなかで、音楽に対する飢餓感を満たすためには、図書館でCDを借りるか、ラジオにかじりつくしか方法がなかったのです。

というわけで新聞のFMの欄をみて、自分のお目当ての曲がかかりそうな番組を探すのですが、如何せん情報が限られていました。

これだと思った番組を実際に待って聴いてみたら、全然期待した内容と違うものだったりして、ひどくがっかりした経験が何度もあったのです。

そこでFM fanの登場です。

【中古】レトロ雑誌 別冊FM fan 1979年 SUMMER NO.22

NHKだけだったと思いますが、FM fanには詳しい番組表が載っていて、番組によってはかかる曲の内容がすでに発表されているものもありました。

この番組表のおかげではずれの番組を引く確率が大分減ったし、録音したテープのラベルとして、番組表をそのまま切り取って張ったりしてかなり便利でした。

またFM fanはすごくストイックな見た目で、内容も真面目な記事が多かったから、
「なんかクラシックの記事とかもついてるみたいだし買ってやるか」
と機会があれば親にかってもらえたりすることも好都合だったのです。

FM fanで知ったバンドも多々ありました。

ゆらゆら帝国もFM fanの年間ベストでかなり強烈に推されていたことから知り、NHKのライブビートという番組でゆら帝のライブを聴いて、のめりこむことになりました。

サニーディ・サービスソウルフラワーユニオンもFM fanで存在を知ったバンドです。

結局そんな感じで付き合いは続き、1999年ごろから廃刊までの約2年ほど、隔週買い続けてきました。

廃刊の知らせが載ったとき、正直驚きませんでした。

ついにこの日がきてしまったかと思ったのです。

ラジオ文化の衰退、ネットの台頭

昔の様にラジオ文化が当時全盛期に比べると衰退してきていたのもありますが、ネットの台頭によって、番組の内容がネットで確認できるようになってきたということもあるでしょう。

また隔週というのも正直ちょいちょい買うのを忘れそうになったり、客離れの一因だったかもしれないと思います。

寂しかったが正直仕方がないと思ってしまったのです。

それから僕はなんとなくラジオを聴かなくなりました。

最初にいらない記事が多かったと書きましたが、いま思い返してみると、無駄ではなかったですね。

なんとなく暇なときにクラシックの記事を読んでみて、「カラヤンって人がすごい指揮者なのね」とか「グレン・グールドって人のピアノがすごいのか」とか、基礎的な知識を断片的にですがえられました。

SACD/J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲 BWV988/グレン・グールド/SRGR-743

オーディオに関しても、記事を読んで「Boseってメーカーのスピーカーがすごいのか。なるほど、中身が管楽器みたいに管を巻いたような構造になっていて、それが特別な響きを生んでいるのね」とか、勉強になったのを覚えています。

普段だったらまったく触れることのないような異分野の情報にも触れるきっかけを与えてくれて、それが今の自分の雑食性にも大きく影響を与えているかと思うと、またひとつ別の感謝の念が沸いてくるのです。

FM fanがなかったら聴いていない音楽ジャンルが沢山あったかもしれない。

そう思うと、正直復刊は難しいかも知れないが、一生忘れないでしょう。

いまさらながらお疲れ様でした。

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