夏にまつわる曲、夏を歌っている曲、沢山ありますね。
ネットにも「夏の名曲選」とか「夏の曲ベスト10」とかいろいろあふれています。
確かに夏のヒット曲がよく集まっているいいセレクションが沢山あるんですけど、けれど、どれも雨の日ソング特集と同じで、自分が夏に好んで聴いているものとまったく違うものばかりが羅列されているんですね。
やっぱり最近のポップが多かったりするわけで。
ということでちょっと時代を遡ったものを含めて、数多くの夏の曲の中から、
コレは決定的だ!という夏の曲を10曲選んでみました。
どれも自信をもっておすすめできる究極の夏ソングです。
①ユニコーン「サマーな男」(1991)
なにも爽やかな夏を歌ったものだけが夏うたではありません。
実際には日本の夏はじめじめじとじとなわけで、BREEZEが心の中を通り抜ける、とはなかなかいかないのも現実です。
そんなうだるような暑さを表現したのがユニコーンの「サマーな男」です。
猛暑の中部屋で暑さをこらえながらダラダラしている男。
外は工事の音がうるさいけど、工事の人も暑い中頑張ってるからやめろとは言えない…というような内容(笑)。
『ブルース』というシングル曲のカップリング曲ですのでかなり地味なポジションの曲ですが、埋もれてしまうにはもったいない曲だと思います。
シングルは当然入手困難ですが、『THE VERY RUST OF UNICORN』という裏ベスト的なアルバムに入っています。
②サニーデイ・サービス「サマー・ソルジャー」(1997)
サニーデイは実に季節感を表現することに長けているバンドですね。
本曲は3枚目のアルバム『愛と笑いの夜』から。
基本的にラブソングなんですけど、夏に感じることのできる季節の雄大さというか、広がりみたいなものが感じられます。
フロントマンの曽我部恵一のソロで「サマー・シンフォニー」って言う曲があって、それは多分夏の一夜の心象風景を切り取ったものなんだろうけど、それが人生について言及しているような広がりを感じるんですよね。
この曲にもそんな広がりがあって、それが夏の雄大さを感じさせてくれるんです。
この雄大さは何なんだろうと考えてしまいます。うまく言語化できてないんですけど。
本人のこの曲に関するコメントはロッキングオンからの転載がウィキペディアに乗っているので参照されたし。
ファンに恵まれているバンドだなとつくづく思います。
③はっぴいえんど「夏なんです」(1971)
この曲は定番と言えば定番ですね。
大瀧詠一、細野晴臣、鈴木茂、松本隆、後の日本の音楽シーンを間違えなく引っ張っていったレジェンドたちが集った奇跡的なバンド。この曲は名盤セカンドアルバム『風街ろまん』(1971)から。
いまから50年以上前の曲なんだけど、音自体は全然古さを感じない。
ただ描いている世界が昔の日本の田舎の夏の風景になっていて、それが永遠に曲に封じ込められてパックされている。
だからいつ聴いても、いまとは別の時間軸のあの時代のあの夏に連れて行かれるんです。
④山下達郎「SPARKLE」(1982)
図らずもクリスマスソングの顔となってしまいましたが、昔は夏といえばもう、山下達郎だったわけです。
そんなわけで山下達郎の夏に関する曲は多くて選曲にまよいましたが、今回は「SPARKLE」とさせていただきます。
なんなんでしょうね。明確に歌詞に夏って出てくるわけではないんですけど、イントロのギターのカッティングからすでに爽やかな夏空が演出されていて、そのあとのブラスセクションがブワーって入ってきて、ガーッと空が広がって行く感じ。擬音がおおいですけど(笑)、もうここで夏全開、って感じなんですよ。
オープンカーで海沿いをドライブしながら聴きたい曲。
そんなイメージ。
⑤サザンオールスターズ「海」(1984)
やっぱり海、夏のバンドといったらサザンとチューブが双璧なわけです。
ただここで「真夏の果実」や「チャコの海岸物語」、チューブだと「あー夏休み」を出してしまうと、定番すぎてつまらないので、あえての「海」。
7枚目のアルバム『人気者で行こう』より。
元々はシングル候補曲であり、ジューシィ・フルーツに提供した楽曲でした。
なんとなく夏の浜辺の夕暮れを思い浮かべるサウンド。
冬に効くと胸をかきむしられるほど非常に切なくなる曲です。
番外編:渡辺貞夫「カリフォルニア・シャワー」(1978)
インスト曲も挟んでおきましょう。
世界的アーティストで、ジャズのインストで、LA録音、バックも海外勢のみ…おまけにタイトルはカルフォルニアで、果たして邦楽と名を打ってもいいのか迷いますが。
まぁ、番外編としておきましょう。
カリフォルニアっぽい陽気なリズムにのった楽しい楽曲です。
リゾートっぽい ウキウキするような夏の陽気さにいつでも連れて行ってくれるそんな曲。
⑥かせきさいだぁ「じゃっ夏なんで」(1995)
これは今回の企画の中でも1番おすすめしたい一曲です。
蝉の鳴き声、花火の音、風鈴などのSEを効果的にふんだんに使用しているので、ちょっと反則ではあるのですが。
夏祭りの1日を切り取った文学的な歌詞は、梶井基次郎の小説や、はっぴぃえんどの詩世界から非常に大きな影響をうけています。
先に紹介した「夏なんです」のアップデート版といってもいい内容で、タイトルは「じゃっ夏なんで」ともっと軽やかになっています。
が、そんなタイトルの軽やかさとは裏腹に非常に濃密な二度とは再現できない1日が、ここでもパックされているのです。
主人公の青年が浴衣姿の恋人と待ち合わせて夏祭りにいくというストーリーが、ラップともポエトリーリーディングとも言える、かせきさいだぁの語りによって進んでいくのですが、主人公の気持ちは直接的にはほとんど表現されていません。
彼の感情を代弁するような描写、または再現不可能な一瞬の出来事の情景だけが淡々と描写されています。
が、それによって我々は主人公の気持ちを想像しながら聴いて、どっぷりとその世界に浸ることを許しているのです。
優れた詩作と心地よいバックトラックによって唯一無二の夏の曲が成り立っています。
⑦Chappie「水中メガネ」(1999)
スピッツの草野マサムネ作曲、松本隆作詞の最強コラボによる曲。
今回のセレクションの中では、知名度は低い方かもしれませんが、夏の恋愛ソングの名曲です。
Chappie(チャッピー)はもともとデザイン集団GROOVISIONSが開発した着せ替えキャラクター。
これはそのチャッピーがボーカルを取って様々な曲を歌うというていで発表された、一連の企画の中の一曲。
一曲ごとに違うアーティストが歌っているのですが、それが誰なのかは公表されていません。
主人公は女性で、水中メガネというアイテムで昔を思い出しています。
水中メガネで記憶に潜ろう
現在の恋愛は倦怠期というか、冷め切っているみたいですね。
あなたの視線に飽きられちゃったね。
去年は裸で泳いでたのにあなたは無視して漫画にくすくす
わたしは孤独に泳ぎだしそう
そういった現実からはちょっと離れて昔の思い出に水中メガネを通して「潜って」いくのです。
「水中メガネをつけたら私は男の子」という印象的なフレーズが出てきます。
これはどういうことでしょうか。
おそらく水中メガネは主人公が子供の時にしていたものなのでしょう。
まだ男女の違いがはっきりする前の子供の頃の思い出に逃げるということだと思います。それで「私は男の子」っていっているんですね。
そこはまだ恋愛の存在しない世界なんです。
男女が無邪気に異性と意識せずにすごせた世界が、そこにはあります。
歌の最後で、主人公は水中メガネを外します。
そこで鏡の中に現れるのは「見知らぬ人女の子」つまり恋愛を知ってしまった現在の自分なんです。
この曲はまだまだ色々と解釈できそうですね。
⑧真島昌利「夏が来て僕等」(1989)
クロマニヨンズ、ハイロウズ、そしてブルーハーツのギタリスト、 真島昌利のソロ作。
本作が収められているアルバム『夏のぬけがら』は夏アルバムとしてもおすすめです。
アコースティックギターやピアノを基調とした爽やかなサウンドで、夏の午後の気だるさのようなゆったりとしたリズムの曲。
風の入ってくる昔ながらの古民家のなかで涼んでいる、そんな爽やかさを想起させる音ですよね。人工的なクーラーの涼しさのような感じではなく。
この曲ももう少し時代の新しい「夏なんです」ですね。少年たちの、一夏を描いています。
ここでもやはり「じゃっ夏なんで」のように描写が羅列されて、少年たちの感情は描かれません。
でもそのときどんな気持ちだったが僕達にはわかるはずです。花火をしたり、自転車で遠くの街までいったり、木に登ったり、アイスクリーム食べたり、誰でも経験しそうな少年のころの出来事がならんでいます。
「僕等」と、子供たちの視点で進んでいきますが、ところどころにハッとするような大人との対比が描かれます。
「僕等」は「終わりなき午後の冒険者」で「夏に疲れるなんて」はなく「高校野球なんてみない」で「夏草にのびた給水塔の影を」みます。
日常に疲弊することなんてなく、何にでも好奇心をもって世界を積極的に捉えようとしている子供たちの姿を、その反対の大人たちと対比して違いを強調する事で鮮やかに描いているんですね。
⑨Base Ball Bear 「ELECTRIC SUMMER」 (2006)
2000年以降の夏のバンドといえば僕の中では圧倒的にBase Ball Bearです。
彼らの楽曲には夏を舞台とした曲や、夏っぽい曲が結構あるのです(「ドラマチック」、「真夏の条件」「BREEEEZE GIRL」など)。
そのなかでも一押しなのが、タイトル直球な、「ELECTRIC SUMMER」。
メジャーデビュー後の初のシングル曲になります。
4つ打ちダンスビートに乗って疾走感あふれるギターサウンドが展開されます。
Base Ball Bearの詩世界の魅力は、フェティシュで、ちょっとバカっぽくて、ロマンチックな表現や、思わずニヤリとするような引用を繰り出してくる引き出しの多さだなとおもいます。
「ELECTRIC SUMMER」でも山下達郎の「高気圧ガール」の引用を、しつつその変態的世界(褒め言葉)を展開しています。
⑩大滝詠一「カナリア諸島にて」(1981)
最後はやっぱりど定番のアルバムからしめたい。ということで大瀧詠一の『ロング・バケーション』から、迷いましたが、「カナリア諸島にて」。
実はこれも松本隆作詞ですよ。
バカンス先のホテルで、ビーチには出ずにあえてプールサイドでビーチパラソルのもと、デッキチェアでトロピカルジュースを飲んでいるような気分になれてしまう恐ろしい曲。
生きることが爽やかに見えてくるから不思議ですね。
この曲が入っている『ロング・バケーション』はランチ2回分ぐらいのお金で、リゾートに旅立ててしまうという、とんでもないアルバムですのでおススメです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
実はこれらの曲。僕は夏以外にも何度もきいてます。
夏以外にこれらの曲を聴いて夏に想いをはせるためです。
やっぱり冬になると寒すぎて夏が恋しくなってしまったりしまいますよね。
ということで他の季節でも夏を想起させるほどに夏力の高い楽曲を紹介しました。