旧譜、新譜おすすめ紹介(復活)

前回はこちらから。

 以前ちょっとここにも書いた気がするが、Grand Theft Autoというゲームにのめり込んでしまった結果、一時的(のつもりだったが)にX(旧Twitter)を離れたが、それ以来Xに戻れなくなってしまった。何を呟いたらいいかわからないのだ。このブログの更新もXでお知らせし、そのたびにそれなりの反応をもらっていた。ただ、どうも今のXは一度人々の注目を失ってしまったアカウントが浮上するのはなかなか難しいらしく、フォロワーの数などなんの意味もなさず、ただただ直近で目立てたかですべてが決まっている。また発信側も特に認証バッジをつけた事で、月額分のPVを稼がなくてはならないというノルマが発生し、過激な発言やライフハックっぽい投稿が増えているという印象である。更に最近では海外の投稿がAIによる自動翻訳で流れてくるようになり、競争は激化しており、当然そんな状況のなかでXをやる気も起きず、ブログも更新する気もおきずでここまで来てしまった。ゲームにのめりこんだ後は、ポッドキャストを重点的に聴いたり映画を沢山みたり、小説を書き始めたりで音楽自体あまり真面目に聴いてこなかった。だらだらと書いたが、その間、勿論なにも聴かなかったわけでもないので今回は重い腰を上げてまた音楽を紹介していきたい。

ART-SCHOOL 25th Anniversary Tribute Album『Dreams Never End』

 良いカバーとは何か、その答えはこの記事に記したつもりだが、そんな良質なカバーが沢山詰まっている素晴らしいアルバム。参加メンバーも豪華で、いかにこのバンドが愛されてきたか、邦楽バンドミュージックにおいて重要な存在であり続けているのか、というのがよくわかる。Art-Schoolはよく歌が下手とか揶揄されることが多かった(それは、古い音源の録音の悪さだったり、端正であることよりも感情のほとばしりを重視しているからだったりするからというのも一因なのだが)。ではこのアルバム、相対的に歌が上手い人たちの歌唱によって楽曲が更によくなっているかというと、一部を除いて全然そんなことはなく、収録されているバンドの、演奏にはあまり不満はないのだが、ボーカルのお行儀のよい歌唱には物足りなさがあり、木下理樹というボーカリストが如何に代替不可な存在かが逆説的にわかるアルバムでもある。またART-SCHOOLの楽曲と相性が良さそうなsyrup16g(実体験からファン層もかなり被っていると思われる)や脱退メンバーが2名合流しているという意味で半分ART-SCHOOLと言えるストレイテナーのカバーが本作のベストかというとそうでもないのも興味深い。他にも、原曲に割と忠実でそれでいてバンドの実力をしめす様な端正なカバーのアジカン(よくも悪くも真面目でタイトな演奏とゴッチの誠実な歌唱は原曲の退廃的な雰囲気とミスマッチだがそれが面白くもある)、世界観にマッチする選曲で自分たちの土俵に引き込んだPeople In The Box、と聴きどころをさらっていけば沢山あるのだが、特に素晴らしかった三曲を詳しく紹介していきたい。
 まずはPedro「Just Kids」。まるでボーカルのアユニ・D為に書かれた曲の様に、そのあどけなさの残る歌声に歌詞がマッチしており、原曲における木下理樹のボーカルが本調子ではない事もあいまって原曲を超えているといっても過言ではない良カバー。これは選曲時点での勝利でもある。勿論わきを固めるバンドの演奏も良い。
 LOSTAGE「斜陽」はまさに原曲の弱点を補填するような見事なカバー。「斜陽」は初期の名曲として知られているがバンドの演奏はまだ拙く、特にボーカルの録音状態が悪く、勢いで成り立っている部分もかなりある曲で「録音さえ良ければな」という不満がどうしても出てきてしまう曲だ。そんな曲がベテランバンドの確かな腕で演奏され、タイトな一曲になっており、原曲の持つ雰囲気を壊さずによりハイグレードなものとして聴かせ、原曲のファンでもこれが聴きたかったと思わせるような仕上がりになっている。ボーカルの声も曲にあっていて、メロディーの気持ちいい所がぴたりとはまっている。LOSTAGEだけのART-SCHOOLカバーアルバムを聴きたいぐらいである。
 そして本アルバムのベストトラックともいえるのはラストに収録されているThe Novembersによる「SWAN SONG」。このアルバムで一曲だけ選べと言われたらこの曲だろう。原曲からのアレンジの大胆さでいえば、本作でも一二を争うぐらい変えてきているにも関わらず、原曲と同じベクトルをしめし、共鳴している理想的なカバーで、原曲からテンポをあえて落としてメロディーのよさを際立たせて、壮大なアレンジで聴かせるその手法は見事としか言いようがなく、サビ部分のパンチラインの高揚感がクセになって何度も何度も聴いてしまった。
 最期にアルバムタイトルのDreams Never Endとは言うまでもなく、New Orderの初期の楽曲で、こういう引用も彼らのカバーアルバムらしい。

「Sunpools」Soft Blue Shimmer

 この連載?ではどうしてもドリームポップやシューゲイズの曲が多く入ってしまっていて、こういうものが苦手な人は(そもそもそういう人は愛想をつかせてこの記事を読んでくれてない可能性が高いが)、またかと思うかもしれないが、そういう嗜好なので仕方がない(このような言い訳ももう何度もしているような気がする)。
 「柔らかな青いきらめき」というバンド名からしてそうなのだがSoft Blue Shimmerはカリフォルニア州、ロサンゼルス出身のシューゲイズバンド。2020年にリリースされたこの曲ではあるが、20年代っぽい目新しさがあるかというとそうでもなく、良い意味で全面的にノスタルジーがある。ただそれも20年代の特徴の一種ではある。歌詞はちょっと要約するには抽象的過ぎてよくのみこめていないのだが、ある恋愛や関係の終わりを描いているようだ。そんな点も含め、なんとなく初期スピッツっぽい雰囲気があるので好きな人にはすすめたい。

「The Boy」Smashing Pumpkins

 メインソングライターでギターボーカルのビリー・コーガンではなく、ギタリストのジェイムス・イハによる曲で歌唱も彼が担当。1996年発表のBox set『The Aeroplane Flies High』収録の一曲でいわばレア音源的な扱いである。ところがこれが、どうしてアルバム未収録だったのか不思議になるぐらいの佳曲で、郷愁を掻き立てるようなソフトなギターロック曲に仕上がっている。ビリーの歌唱でもよかったが、よりソフトなイハの歌声も非常に楽曲にマッチしている。前年に二枚組アルバムを発表して全米チャートで一位をとるなど、ノリにのっていた時期であったことが、このような曲がアルバムから漏れてしまうことからもわかる。どちらかといえばスマパンのど真ん中の作風というよりはやはりイハのソロ作に通ずるサウンドのため、収録されなかったのはわかる気もするがもっと聴かれて欲しい一曲。

「take me by the hand」Oklou

 2025年、音楽好きの中で話題をさらったフランスのSSW、Oklouのデビューアルバムの中の一曲。アルバム全体に言えることだが、プロダクション、音像が近年のダンスミュージックを思わせるそれなので、当然その文法にそった盛り上がりを期待してしまうのだが、肩透かしをくらってしまう。キックが入ってきて欲しいところで入ってきてくれず、盛り上がりが期待される場面で、逆に落ち着いた展開を見せたりするから、ダンスミュージックのしての強度という観点だと、正直物足りなさを感じてしまう。かといって引き算の美学といえるほどストイックに要素がそぎ落とされているわけでもない。ところが何度か聴いているうちに、そのちょっと物足りなさのある抑えた感じが逆に癖になって何度も聴きたくなってしまう。自分だけの部屋で、はにかみながらちょっと踊るのにちょうどいいパーソナルスペースの為のダンスミュージックとして実によく機能してくれる。これが、なかなかないバランス感覚で、ちょっとした発明だと思うし、ベッドルームポップを経た、本当に「今」のダンスミュージックだし、24年の音楽シーンの中心にあった、イギリスのCharli XCX『Brat』に対するフランスからの回答のように感じられる。

前回のおすすめ紹介はこちらから。

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