邦楽アルバムランキング企画をやっていたので、集計やら発表やら後始末やらで、前回からかなり間が空いてしまった。ということで今回の内容は上記の企画の影響で聴いていたものが殆どである。加えてその間新譜を追いかけるという習慣がなくなってしまったので、今年、もしくは去年の曲が一つもなく、邦楽偏重で、かなり後ろ向きな内容になっている。
まあこの何か月間で相当色々あったから、それを一つの記事にまとめるのにそもそも無理があるのだが、一度やってしまわないとけりが付かないので無理矢理お送りする。
『オレンジチョコレートハウスまでの道のり』羊文学

羊文学2枚目のEP。デビューアルバムより前に発表されたアルバムで、初期の音源なのだが、勿論今の彼女らの腕前からするとまだまだ荒削りではあるものの、すでにスタイルは完成されている。まず、タイトルがいい。『オレンジチョコレートハウスまでの道のり』。高野文子のマンガのタイトルみたいだ。チョコレートハウスというとファンタジックな響きがあるが、そこにオレンジが入ることでちょっとビターで、甘酸っぱいようなニュアンスが加わる。そしてこれはあくまでもオレンジチョコレートハウスのハウスの話ではなく、その道のりの話だ。理想主義的でありながら地に足のついた姿勢がタイトルから伺えるが、それは羊文学の楽曲のテーマにも当てはまる。
音楽をならして一番高い場所まで行こう
どうせいつになっても自由なんかに なれやしない
「ブレーメン」
サウンド面で言えば、この作品はこの直後に出る『若者たち』よりはその後にでるセカンドアルバムの『POWERS』の作風に近い広がりのある音作りで好みというのもあるかもしれない。良く聴いたし勇気づけられた。こんなバンドと同時代を過ごせて幸せだ。
「急行列車」THE 2
どうもかっちりとしたバンド演奏にのびやかな歌声としっかりしたメロディが組み合わさった楽曲に弱いようで、以前も紹介したMASS OF THE FERMENTING DREGSの「SUGAR」とかがそれにあたるが、この曲もそのパターンでかなり気に入って何度も何度も繰り返し聴いていた。疾走感溢れるバンドサウンドだが、少しウェスモンゴメリー的なジャジーなテイストの音色、フレージングのギターソロが入っていて、その点もよかった。今後この曲を聴くと今頃の感じていた事が思い浮かぶと思う。そのくらいよく聴いた。彼らの他の楽曲も聴いたが、自分にとってこれほど芯を食ったような楽曲は見当たらず、こういう出会いもあるから偶然の力は侮れない。Spotifyの週替わりおすすめプレイリストで見つけた曲。
The 2はそれぞれ別々のバンドで活動していたメンバーがセカンドキャリアとして始めたバンド。残念ながら現在は活動を停止している。
「Been Caught Stealing」Jane’s Addiction
『グランド・セフト・オート』というどうしようもない、けど最高なゲームを最近ずっとやっていて、それもあってTwitter(現、X)から疎遠になってしまったんだけど、この曲はそれに使われていて、その関係で最近ハマって聴いていた。勿論Jane’s Addiction自体は昔から聴いていて本作収録のCDも持っていたがあまりピンと来ず、実家に眠ったままだった。こういう出会いもある。
登場人物には全く共感できないが、クライムムービーがウケたり、怪獣映画で怪獣が街を破壊するのをみてすっきりするような事と同じ構造がここにはある。
『Sketch for 8000 Days of Moratorium』Boyish

ジャパニーズ・シューゲイズの名盤として知る人ぞ知る一枚。これは前述した邦楽の企画で知った。
正直歌は下手なんだけどそれも全然気にならない。ある程度音程とリズムが合ってて、声や歌い方が演奏に溶け込んでたらあとはどうでもいいんだろうなと再確認した。逆に歌はめちゃくちゃ上手いのにバックの演奏との差が激しいとかボーカルが浮いて聴こえる曲、アーティストは苦手である。
これからの季節にぴったりな一枚。
『葬儀屋の娘』工藤祐次郎

これも例の邦楽投票企画で知ったアルバム。平成にありながら昭和のフォーク的な雰囲気をだだよわせた一枚だが、音響的なアレンジが施されている曲もあり、その点は実に2010年代っぽい。かと言って同年代のインディー・フォークに属するかといえば、そこまでの先鋭性は持ち合わせておらずあくまでも素朴なフォークアルバムである。このバランスが実にチャーミングで良く聴いていた。