著名な映画監督が撮ったミュージックビデオ10選

ミュージックビデオには、映画監督として成功している著名人によって撮られたものが、少なからず存在します。

今回はそんな、有名映画監督によって撮られたミュージックビデオを紹介したいと思います。

その映画監督の個性がにじみ出ているものだったり、意外と個性は抑えられていたり、異なる作風が垣間見られたり、映画作品と比較しつつ、紹介していきたいと思います。

「Vogue」Madonna 監督:David Fincher

『ファイト・クラブ』『セブン』『ザ・ソーシャル・ネットワーク』等の映画で有名な映画監督、デヴィッド・フィンチャーが監督しているのが、マドンナ「ヴォーグ」マリリン・モンローマレーネ・ディートリヒなどの、過去のアイコニックな女優の引用をちりばめつつ、モノクロの映像でマドンナのさまざまな魅力が一本のPVのなかに詰まっている煌びやかで贅沢なPV。90年のMTVビデオアワードを3部門受賞したり、ダンス「ヴォーキング」も流行するなどマドンナの人気をさらに決定づけた一曲でもある。

いま我々がフィンチャーと聞いて思い浮かべるテイストはちょっと違うが、極上のシルクのような滑らかさのある画面のタッチからは、当時から映像の質感やライティングに並々ならぬこだわりがあったことがわかる。

フィンチャーは今や大御所的なフィルムメーカーだけど、実はミュージックビデオからそのキャリアを出発させた人でPV監督作も当然多い。他にもJustin Timberlake「Suit & Tie」Sting「Englishman in New York」など。その全貌は英語版Wikiで確認できる。

「Under the Bridge」Red Hot Chili Peppers 監督: Gus Van Sant

『グッド・ウィル・ハンティング』『エレファント』で有名な映画監督、ガス・ヴァン・サントが監督したのが、レッチリの代表曲「アンダー・ザ・ブリッジ」。照明や色づかいが独特の世界観を醸し出しているが、このような演出を彼の映画でみた記憶がないから、これがガス・ヴァン・サントっぽさなのかといわれたら正直そうでもない気がする。

自身もミュージシャンとして音源を発表したり、カート・コベインの死ぬ前の数日間から着想をえた『ラスト・デイズ』という映画を撮っていたり少なからず音楽ともかかわりがある。他にはDavid Bowie Elton John、意外にもDanny BrownのPVなどもとっている。

「Bad」Michael Jackson 監督:Martin Scorsese

マーティン・スコセッシは最早説明の必要がないくらいの大物映画監督だが、そんな彼が撮ったのはなんとマイケル・ジャクソン「バッド」のPV。映画界のトップランナーとキング・オブ・ポップの豪華な組み合わせ。前半がモノクロでドラマ仕立てになっている長尺のPVで、ドラマパートも結構見ごたえがある。

スコセッシといえば『グッドフェローズ』「いとしのレイラ」を印象的に使ったり、今となってはいろんな映画でさんざんこすられてる「ギミー・シェルター」なんども映画で使ったり、古くはザ・バンド『ラスト・ワルツ』最近ではストーンズ『シャイン・ア・ライト』など、音楽関連のドキュメンタリーも撮ったりしていて、音楽シーンとの結びつきも強い監督という印象がある。

そう考えるとプロモーションビデオ自体はこれとロビー・ロバートソンの「Somewhere Down the Crazy River」だけしか撮ってなくて、意外と少ない。

「Sugar Water」Cibo Matto 監督: Michel Gondry

『エターナル・サンシャイン』『恋愛睡眠のすすめ 』『グリーン・ホーネット 』などで知られる映画監督、ミシェル・ゴンドリーの名作PVの一つがこちら、チボ・マット「シュガー・ウォーター」。逆回転系のPVは割と多いが、こちらの作品はそれにさらにひねりを入れていて、見るものを混乱させ、何とか理解しようと何度も見てしまう。

というかミシェル・ゴンドリーの場合、『エターナル・サンシャイン』は有名だが、ミュージックビデオでのキャリアのほうが名高く、どちらかというとミュージックビデオの監督が『エターナル・サンシャイン』を撮ったという認識のほうが今のところ正確な気がする。『エターナル・サンシャイン』は特に彼がPVで実践してきた作家性、映像的な快楽が、うまく長編映画に結びついた傑作なので彼のPVが気に入ったら是非見てほしい。

PVの代表作としてはThe White Stripes「Fell in Love With a Girl」、The Chemical Brothers「Let Forever Be」、「Star Guitar」、Kylie Minogue「Come into my world」、など他にも多数ありで、どれも必見。

「Dancing in the Dark」Bruce Springsteen 監督:Brian De Palma

『スカーフェイス』『アンタッチャブル』『キャリー』『ミッションイン・ポッシブル』など様々なジャンルで傑作を撮り続けてきたブライアン・デ・パルマが撮った唯一のプロモーションビデオが、
ブルース・スプリングスティーンの代表曲「ダンサー・イン・ザ・ダーク」

このPVは、スプリット・スクリーンや被写体の周りをぐるぐるカメラが回る演出など、デ・パルマの特徴的な演出が特に出てこない、淡々とライブ映像を映しているだけの割と単調な作品ではある。ただ、やっぱり曲が良いのと、みんな楽しそうに演奏しているので、それだけで絵にはなっている。

日本でも人気だったアメリカのシットコム『フレンズ』で有名なコートニー・コックスが、ステージに上がってボス(ブルース・スプリングスティーン)と踊る女の子の役を演じているのも見どころ。

デ・パルマがPVを撮ってるのは意外に思うかもしれないけど、『オペラ座の怪人』を下敷きにしたロックオペラ『ファントム・オブ・ジ・オペラ』があったり、『ボディ・ダブル』ではフランキー・ゴーズ・トゥー・ハリウッドが出てて、あの有名な「リラックス」を丸々歌ってPVみたいになっているシーンがある。

ということで意外と音楽との関わり合いも深かったりするし、特に『ファントム・オブ・ジ・オペラ』は劇中の様々なミュージシャンのステージがフィーチャーされており、演奏シーンも見ごたえがあるから、ミュージシャンを撮るのはうまいとおもうので、もっとPVを撮ってほしかった。ホラーやサスペンス、アクションなどのジャンル映画も得意だし、『スカーフェイス』はUSラップの聖典みたいになってるし、デパルマと特徴的な演出もMVと相性が良さようなだけに残念。

「Solitude Standing」Suzanne Vega 監督:Jonathan Demme

『羊たちの沈黙』で知られる映画監督ジョナサン・デミは音楽ファンの間ではトーキング・ヘッズ『ストップ・メイキング・センス』を撮ったことでもお馴染みかと思う。他にもニール・ヤングジャスティン・ティンバーレイクのコンサートフィルムを撮っていたりして、割と音楽とのかかわりがある。本数はそれほどないもののPVもとっていて、一番有名なのはNew Order「The Perfect Kiss」

しかし、今回紹介したいのは「ルカ」のヒットでも有名なSSW、スザンヌ・ヴェガのPV。バンドの演奏シーンを撮っただけのなんてことはない一本なんだけれど、ミステリアスでシリアスな音像と引き込まれるようなリズムが緊張感がある演出や演奏シーンの効果的な抜き出しとマッチしていて、何度も見てしまう。スザンヌ・ヴェガのほかでは見られない魅力、眼差しがこのPVにはあって、それは『羊たちの沈黙』でのジョディ・フォスターに通じるものがあると思う。隠れた名作PV。

「The Queen Is Dead」 The Smiths 監督:Derek Jarman

Derek Germanが監督した他のThe SmithsのPVもまとめられている。

全編青い画面が続く映画『Blue』など、かなり癖の強いアート系映画で知られるイギリスの映画監督、デレク・ジャーマン。そんなデレク・ジャーマン、なんとザ・スミスのPVを数本撮っている。スミスといえばサウンドだけでなく、ボーカルのモリッシーがデザインしたジャケットでも強烈な美意識が発揮されていて、そんな彼らとデレク・ジャーマンの組み合わせはかなり妥当だと思う。

本作はそんなデレク・ジャーマンの個性がはっきりと見れる一本になっている。メンバーの演奏シーンが代替的にフィーチャーされたものを期待していたので正直最初は微妙だとおもったが、これはこれでいいPV。

他にもペット・ショップ・ボーイズオレンジ・ジュースなどのPVも撮っていて、いずれも作家性が前面に出たPVなので、デレク・ジャーマンのファンは是非チェックしていただきたい。

「I Just Don’t Know What to Do With Myself」The White Stripes 監督:Sofia Coppola

『ロスト・イン・トランスレーション』『SOMEWHERE』『ヴァージン・スーサイズ』などで有名なソフィア・コッポラが撮っているPVがザ・ホワイト・ストライプス「I Just Don’t Know What to Do With Myself」。楽曲同様、無駄を排したシンプルな内容で、有名なファッションモデルのケイト・モスがただポールダンスを踊っているPV。『SOMEWHERE』でホテルで暮らしている主人公の映画スターが、自分の部屋にポールダンサーを呼んで踊らせているシーンがあるから、ポールダンスをモチーフに使うのが好きなのかもしれない。

ソフィア・コッポラは、『マリー・アントワネット』(映画自体は正直微妙だったけど)でGang of Fourを使っていたのは痺れたし、本人もケミカル・ブラザーズ「Elektrobank」(スパイク・ジョーンズが監督)に主役として出演したりしていて、わりと音楽への造詣や関わり合いも深いような気がするからこれからももっとPVをとってもらいたい。

「Sabotage」Beastie Boys 監督:Spike Jonze

『マルコビッチの穴』や『her/世界でひとつの彼女』で有名なスパイク・ジョーンズが監督したのが、ビースティ・ボーイズ「Sabotage」。メンバーが扮装して、刑事ドラマでよくあるシーンをパロディーにしたバカバカしくて最高なPV。

スパイク・ジョーンズもミシェル・ゴンドリー枠といってもいいかもしれない。スパイク・ジョーンズだけで楽々丸々一本記事かけてしまうぐらい名作が多い。余談だがスパイク・ジョーンズは直前に紹介したソフィア・コッポラと一時期結婚もしていた。

ちなみにビースティー・ボーイズのPVにも名作が多く、メンバーのMCAが多く監督をつとめている。

「Little of Your Love」HAIM 監督:Paul Thomas Anderson

『ブギーナイツ』『マグノリア』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などの代表作があり、有名映画賞を数々受賞し、現代で最も評価されている映画監督の一人、ポール・トーマス・アンダーソン。そんな彼が監督したのが、ハイム「Little of Your Love」。ハイムらしい、キャッチーで踊れる楽曲にマッチした、楽しさあふれるPV。『ブギーナイツ』にも70年代後半のディスコシーンを当時の音楽と共に再現した楽しいシーンにあふれていた。

『マグノリア』はエイミー・マンの楽曲にインスパイアされて制作された映画だったり、自身の映画のサウンドトラックにはレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドを起用していたり、音楽との結びつきも結構ある。前述した『ブギーナイツ』や『インヒアレント・ヴァイス』、最新作の『リコリス・ピザ』(ハイムのアラナ・ハイムが準主人公)は特に音楽の使い方もクールなので是非見てほしい。

他にもレディオヘッド「Daydreaming」や昔付き合っていたフィオナ・アップルのPVも何本かとっている。

ちなみにポール・トーマス・アンダーソンがPVを沢山とっていたり『リコリス・ピザ』でアラナ・ハイムを起用したり何かとハイムとの結びつきが強いのは、彼がハイムの三姉妹の母親の元教え子だったからでもある。

まとめ

というわけで、有名映画監督が撮ったミュージックビデオを10本紹介していきました。

今回は紹介しませんでしたが、もちろん日本の映画監督もPVを撮ったりしています。日本では岩井俊二も、もともとミュージックビデオを中心に活動していたデヴィッド・フィンチャーみたいな経歴の監督でした。

また、カンヌで賞をとったり海外でも評価の高い是枝裕和監督もPVを撮っていたりします。是非チェックしてみてください。

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