4月5月の新譜・旧譜おすすめをお送りします。アークティック・モンキーズやニュー・オーダーの全アルバムレビューをやるためにそればっかり聴いてたりして、あんまり他のが聴けなかったのでまた2か月まとめてですね。
「The Narcissist」blur
90年代にOasisと並んでイギリスを代表するバンドとして活躍したblurの約8年ぶりの新曲。この新曲の発表だけでなく、更にはアルバムもリリース予定、サマソニでの来日と、日本のファンには嬉しい知らせが続いた。blurは大好きなバンドだけど、フロントマンのデーモン・アルバーンのGorillazとしての活動が順調なだけに、blurとしての新しい音源を全く期待していなかっただけにとても嬉しかった。肝心の新曲だが、メランコリックだけれどもバンドとしてのダイナミズムもちゃんとある良曲で、何度も繰り返して聴いてしまった。デーモンは明るい曲よりも、今回みたいにちょっと影のある曲とか暗い曲の方がいい曲を書くと思っているので、今回はどんぴしゃだった。歌詞の内容もロックスターの悔悛と長年のファンに対する感謝みたいな内容でグッと来る。タイトルのナルシストとは自分のことなんだろう。
『Jailbreak』Thin Lizzy
フィル・ライノット率いるアイルランド出身のロックバンドによる、名盤と名高い1976年発表、6枚目のアルバム。結構昔にハードロックの名盤という文脈で聴いてみたらいまいちだった記憶があってずっと聴いてなかったが、改めて聴いてみたらめちゃくちゃ良かった。確かにハードロック的なカタルシスを期待すると派手さが足りない。が、エルビス・コステロやニック・ロウなどのパブ・ロック的な小気味よさがあってよかった。このように視点が変わる事で急にモヤが晴れたようにパッと理解できる事があるから音楽って面白いし、ジャンル分けって結構重要だなと思うし、定期的に見直しをかけることは大事だと思う。
『大吉』Summer Eye
元シャムキャッツの夏目知幸の初のソロ作。夏目だからSummer Eyeという、清々しいまでに安直なプロジェクト名でまず笑う。シャムキャッツと言えば、当初から独特の捻くれたポップを展開していたギターバンドで、後期になるにつれてエッジィな部分とキャッチーな部分がとてもバランスよく混ざり合っており、今後が楽しみなバンドだったから解散はかなりショックだった。
というわけでソロ一弾の本作、どんな内容か非常に興味深かったが、ディスコ、ハウス、などのダンスミュージックのイディオムを使った打ち込みがメインのダンサブルなポップミュージックで、シャムキャッツらしい脱力感やキャッチーさはあるが音楽的にはかなり違った内容になった。
とはいえ、相変わらずの良い意味で気の抜けたような歌唱は健在で、シャムキャッツ好きな人は聴いて全く損はしないし、すんなり聴けると思う。なにも考えなくても楽しい一枚だが、よく注目すると結構鋭い歌詞に注目しても楽しめる。傑作という肩ひじ張った言葉を使いたく無くないので「いいアルバム」と言っておきたい。
『Nachtmuziek』Sonmi451
ベルギーのミュージシャンBernard Zwijzenによるソロプロジェクトのアルバム。Spotifyのおすすめに出てきて、ジャケットが面白いなと思って偶然聴いてみたらよかった。だからアーティストに関する情報は殆どしらない。2019年作。基本的にはシンセ主体のアンビエントなんだけど、グリッチノイズが心地よい雨音の様に各所にまぶされていて、その表現の繊細さにやられてしまった。また日本語のサンプリング(どこから引用したのか全くわからない)がちょくちょく入ってくるんだけど「時々オヤジギャグがおもしろい」とか「あと一息じゃないですか」とか変な台詞ばっかりで我々にとってはかなりシュールに響く。たぶん本人は何を言ってるかわからずに響きだけで引っ張ってきたんじゃないかと思う。アルバム名の通り夜に聴くのにぴったりだし、前述の通りグリッチノイズが雨音みたいだから雨の日にもシンクロするかと。
『Overseas』Tommy Flanagan
ジャズもちゃんと聴いていきたいなーと思いつつ最近全然新しく聴いたりしてなかったので、久々に本を購入。
この本を読んで出会ったのが本作というわけである。ジャズあまり詳しくないんだけど、一応好きなジャズ・ピアニストはバド・パウエルで、トミー・フラナガンは彼に影響を受けているということを本書で知って、聴いてみたらすんなりハマれた。確かにバド・パウエルとスタイルが似ていると思う。トミーのリーダーとしてのデビュー作で、かっこよくて粋な演奏が楽しめる名盤でジャズ初心者にもおすすめ。