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2022年、年間ベストアルバム&曲

2022年の年間ベストソングとベストアルバムを発表していきます。

最初に断っておくと、これはきわめて個人的なリストで、「これを読めば大体2022年がどんな年だったが傾向がつかめる」とか「22年の重要作はだいたい網羅している」とかいうものでは全くありません。

筆者のSpotify2022年良く聴いたもののまとめ。当然のごとく過去の作品ばかりである。

そもそも自分は今までの人生で、リアルタイムの音楽中心に聴いてきた時が一度もなかったんです。

それはやはりCDが主流だった時代で育ってきて、CDで音楽を聴いてきていて、それは同時に過去のカタログが一番充実していた時代だったのが大きいと思います。

限られた予算のなかからCDを買うとなると、ある程度良さが担保されている過去の名盤にリスニングの比重が高まってしまいます。

それが自分のリスニングスタイルであり、ストリーミングサービスで今の音楽に手軽にアクセスできる現在でも、過去に比重を置いてしまうのもまた仕方のないことなのかもしれないです。

ということで、年間ベストとしての強度を重視するなら最低限これぐらいは聴いててほしいというラインを保つのはあまりにも自分にとってはストレスなので、もう量聴くのはあきらめて、単純に偶然出会ったものだけ、話題作よりも個人的に聴いていたものだけを選出しました。

曲ベスト

まずは曲ベストから。まずは断っておくと、ここで選んだ曲の多くは、僕が年末にTwitter上で「2022年発表曲で個人的に特によかったと思う曲を一人三曲まで」という条件で募集したプレイリストで初めて知ったものが多いです。

このプレイリスト、本当に出会いが多く、2022年の音楽シーンの充実っぷりがよくわかる好リストになっているので是非聴いてみてほしいです。

一人三曲までなんですけど、「一曲気に入った曲があれば、その曲を選んだ人が選んだ他の二曲もだいたい自分の好み」という面白い傾向があって、そういう意味ではものすごく効率よく自分好みの音楽を発見できるプレイリストかもしれないですね。Apple Musicなど、Spotify以外のユーザーの人の選曲はTwitterで募集して僕が入れています。なので、このプレイリストの最初の三曲以外で僕が入れたものはすべて他の人の選曲です。

と、本筋には関係ないプレイリストの話が長くなってしまいましたが、曲ベスト紹介していきます。

「Jackie Down The Line」Fontaines D.C.

ポップ・ミュージックとヒップホップの時代だった2010年代からの揺れ戻しなのか、話題のロックバンドが増えてきた昨今。正直自分の好みにドンピシャで、興奮できるようなバンドはまだ出てきてないなというのが正直な感想だが、Fontaines D.C.のこの曲は違った。バンドミュージックでしかなしえない弛緩しつつも緊張感がある独特のテイストが癖になる一曲で、一歩間違えれば凡庸になってしまいそうなシンプルで単純なようでいて実は結構考えられているようなアレンジとロンドン在住のアイルランド人の微妙な立ち位置をうまくとらえた歌詞が見事。本当に一時期良く聴いたし、YouTubeでライブバージョンを探して聴いたりもした。

「ガーベラ」The Songbards

これは質問箱で教えてもらったバンドの曲。一般受けしそうな恋愛の歌詞のチャラチャラとしたポップロックのようでいて、バンドとしてのダイナミズムがきちんとあり、かつ十分ポップなアレンジが、なかなかありそうでないバランス感覚で、実は凄いことをやっているのではないかと思った。特に変わってることもやってないようなんだけど彼らにしかない中毒性みたいなものがあり、去年何度も聴いてしまった。織田哲郎坂井泉水(ZARD)のソングライティングチームが曲を提供していたFIELD OF VIEWみたいな交じりっ気のない爽やかさを想起させる一曲。

「BLOOM」♥ GOJII ♥

去年の年末に出た♥ GOJII ♥のシングルで多幸感が半端ないEDM。♥ GOJII ♥は前にファーストアルバム『Hypersymmetry』を紹介したが、その時はもっとHyperpopっぽい、雑多で実験的で過激な音楽をやっていたが、近作ではもっと整理整頓されたEDMを展開している。しかし、ファーストのころのメランコリックで切なさとどことなく懐かしさを感じるようなフィーリングは健在で、ダンスミュージックとしても強度、快楽性を増した強力なトラックに仕上がっており、もうちょっと売れてもいい気がする。

「YOIMIYA」ばってん少女隊

例のプレイリストで知った曲。水曜日のカンパネラで知られるケンモチヒデフミが、九州のご当地アイドルグループをプロデュース、楽曲提供した一曲。ケンモチヒデフミはこれまでもKID FRESINOに提供したトラックや、メインプロジェクトの水曜日のカンパネラでたまにアジア的なテイストをトラックに持ち込んだりしていて、今回はそういった本人の得意とすることろが全開になったトラックで、理想的な和洋折衷EDMになっている。

歌詞も担当していて水曜日でのコミカルなテイストは少しシリアスな方向に振れているものの、言葉遊びやイメージの広がりも十分に楽しめる内容になっていて、トラック同様、日本古来の事象と現代的なキーワードも混ざり合ったもので、まさにケンモチヒデフミにしか作れない仕上がり。

さっき紹介した♥ GOJII ♥に通じるテイストがあり、「お前こういうの好きなだけだろ」と言われたら「ハイ、そうです」と正直に答えるしかない。

「Blue」Animal Ghosts

アメリカ、オレゴン州ポートランド発のシューゲイズプロジェクトの一曲。バンドとは言ってないしFrom Bedroomとか言ってるので個人のプロジェクトかもしれない。昨今のシンセポップ、ドリームポップを通過したドストレートなシューゲイズで、同ジャンルが好きならまあ、ど真ん中のサウンドかと。そういう意味では特筆すべきことは無いが。良いものは良い。Parannoulの様な良質はシューゲイズプロジェクトが今後も増えていきそうな気がする。こちらも例のプレイリストから。

「Maybe Understood」syrup16g

でそのAnimal Ghostsにも近い雰囲気のあるドリームポップを展開している曲をsyrup16gの新譜から。大抵昔から活動しているバンドの新譜はがっかりすることが多いのだが、最近それを裏切るケースが増えてきており、シロップの新譜も「最高傑作なんじゃ?」と思えるぐらい良かった。サウンドもちゃんと今っぽさもある深い音像だし、韻の踏み方の進歩しててて気持ちよくなっている。実はユーモアも紛れ込んでるのもポイントで。その中でも最も印象的だった曲をピックアップした。アルバムベストに入れても良かったけど、大事にゆっくり聴きたいのでやめておいた。また、自分以外にはどうでもいい話だが、今は疎遠になってしまったが、昔仲良かった知り合いがいて、シロップのアルバムを何枚か一気に借りて、そこから好きになった経緯があるので、また彼女と仲良くなれたような気がして感慨深かった。

アルバムベスト

今回アルバムベストに関しては選出をやめてしまおうと思ってました。というのは、フィジカルを買わなくなったことによってアルバム単位で音楽を聴くことをもはや殆どしなくなってるんですよね。

まあ、それでもなんだかんだでアルバム通して聴いてたな、というものを選出しました。

『Ultra Truth』Daniel Avery

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英ボーンマス出身のプロデューサー/作曲家、ダニエル・エイヴリーの最新作。サウンドテクスチャーとか展開とかもめちゃくちゃ新しいとか先鋭的とかそういう感じもせず、90年代から現在までのIDMのロマンティックでメロウな部分が凝縮されて展開された様な一枚。「オウテカやAphex Twinの静かめで美しさを湛えたような曲がとにかく好き」という人にはかなりおすすめ。ずっと聴いていられる。

『Harry’s House』Harry Styles

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ワン・ダイレクション(もうこの肩書も不要だと思うのだが)のソロ3作目。細野晴臣『HOSONO HOUSE』からインスピレーションを得てつけられたタイトルなのに日本だけチャートアクションがぱっとしなかったことでも話題となった作品。

とにかく抑制されたポップスが心地よく、飽きが来なかった。なんだかんだで思い返して結構聴いたし、「Late Night Talking」とか「As It Was」とかは思わず日常生活で口ずさんでしまった。あんまり音楽聴かない人にも素直にすすめられるし、これは地味に5年後とかも聴いてるかもしれない。良作という言葉がぴったりの一枚。

『Who Cares?』Rex Orange County

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イギリスのシンガーソングライターがオランダのポップミュージシャン/コンポーザーBenny Singsと共作体制で作成した4枚目。レックスのハスキーな歌声とそれにマッチするような親しみやすいメロディー、それにちゃんと踊れるというポイントもあって、全編楽しめ、割と何回も通しで聴いた。性的暴行疑惑が持ち上がったため「もう聴けねーし、年間ベストにもいれられないな」と思っていたところ、原告側主張に矛盾があったため年内に不起訴に。無実ということでとにかく地味だけどいいアルバムなので聴いてください。

『CAPRISONGS』FKA twigs

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先鋭的なサウンドプロダクションで批評的評価も高いイギリスのシンガーソングライターFKA twigsの初のミックステープ。フルアルバムとしては三枚目。実験的なサウンドで有名な彼女だが、今回はいままでやってきた実験的要素も活かしつつかなり聴きやすいR&Bに仕上がっているので、ミックステープと名をうっているのは、彼女の通常の作風よりもかなりポップな方向に仕上げたからかもしれない。いつもは実験的なことをやっている人が本気出してポップなものを作るとこんないいものができるんだと驚くような内容で、個人的にはFKA twigsの今までの作品では一番好き。特に「Oh My Love」は確実に2022年一番聴いた曲の一つで聴くと泣いちゃうから封印したぐらい聴いてた。

『結束バンド』結束バンド

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Twitterのタイムライン上での音楽マニアたちの本作への反応は主に三つ、絶賛、否定、無関心である。まあでもその三つの反応とも深く納得できる。まずは絶賛だけれども、これは「邦楽ロックの名盤ベスト」の記事にそのすばらしさについて書いたのでそれを見てほしい。

次に否定だけれども、そもそもこのアルバム、いまの音楽シーンの一応のメインストリームっぽい、R&Bベースのリズミカルなポップスや、アンビエントを取り入れた深い音響のチルなムード漂う楽曲群と重なるところがあまりにも少なすぎて、それらの音楽に耳親しんでいる人にとっては異物でしかなく、正直「J-POPがガラパゴスまーたやってらぁ」に見えなくもない。というかまあそれが良さなんだけど。

無関心は、こういうバンド系の漫画やアニメ、邦画などの企画で流れるバンドミュージックで痛い目を見てきた人たちで、もうそれだけで聴く気がしないのだと思う。あとは単純にアニメに興味がない人も多い。正直僕も知り合いに強く勧められなければアニメを見てなかったと思うし、本作を聴きもしなかったし、多分前半だけ聴いて「良くないな」とバッサリ切っていたと思う。

そう、正直前半が後半に比べると物足りないので、アニメを見てないと最後まで聴かずに途中でやめてしまうかもしれない。そこで損しているなと思った。ということで「最初のほう聴いたけどダメだった」という方も、後半から「カラカラ」「あのバンド」「フラッシュバッカー」、最後のアジカンのカバーだけでも聴いて、そこから判断してください。「そんな聴けるか!」という人は「カラカラ」だけでも!

筆者がお熱の「カラカラ」。

『The Car』Arctic Monkeys

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今回のアルバムについてなにかしら語られるときに、その人の個人史におけるアークティック・モンキーズについてついでに触れられることが多かったと思う。そのぐらいアークティック・モンキーズはドラスティックに作風を変えてきたし、その時々でインパクトを与えてきた。きっと70年代のデヴィッド・ボウイの変遷をリアルタイムで味わってきた人はこんな戸惑いを毎年受けてたんだなと、ちょっと想像することができた。実は自分は彼らに対しては毎度、いいなと思いつつもどこか距離がある感じだったが、今回は割とすんなり受け入れることができた気がする。自分はストレートなロックバンドとしての彼らにあんまり期待してなかいからかもしれない。あと、ジャケットと内容は若干ミスマッチではないかと思った。というのは自分はこれをそれこそ車のなかで、それも夕暮れ時に良く聴いており、それが実にマッチしているから、ジャケットももっと黄昏た何かだったらみんなもっとすんなり入れたのではと、思わないでもない。そのミスマッチも、もしかしたら作戦なのかもしれないし、本人たちはこれがドンピシャだと思っているとは思う。

『Killer in Neverland』4s4ki

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日本のシンガーソングライター4s4kiの4枚目のフルアルバム。仮想空間にのめり込んでいく主人公の物語をベースにしたコンセプトアルバムになっており、これはもう21世紀のジギー・スターダストである(怒られそう)。本人は音楽をあまり聴かず、ゲーム、映画、アニメなどの曲からインスパイアされている模様。なるほど……。ただ、本人は意識していないかもしれないが、90年代以降の以降の音楽シーン(トラップ、ドラムンベース、ロック、J-POP、ダブステップ、ハウス、R&B、ドリームポップ、ハイパーポップ……)の心地よい要素が全部おりこまれた優れたポップアルバムで、なんといってもその取り込みかたが、もう超自然体で、無駄な気負いを感じない。様々な音楽ジャンルが並列的に摂取できる環境の産物で、これは普段から「ロックばっかり聴いてるからたまにはテクノとヒップホップも聴いてバランスとらんとな、よっこらせ」とか言ってる自分には無理な芸当だとおもった。

そろそろ自分もDAWでも買って宅録でも始めようと思っていた矢先これを聴いて心がバッキバキに折れました。

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